食品スーパーのライフ、バイオガス発電所事業の環境・経済効果とは
ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長:以下、ライフ)は2022年3月、食品残渣を発電に活用する「ライフ天保山バイオガス発電設備」(大阪府大阪市)の稼働を開始した。サステナビリティの実現のために、約9億円を投じて発電設備運営にまで踏み込んだもので、食品スーパー(SM)では“異例”であることから業界で大きな注目を集めた。本稿では、なぜライフが発電設備開設に至ったのか、また、いかに立ち上げから運用開始まで実行できたのかについて迫る。
事業継続・拡大のために未経験の領域に挑む
ライフがバイオガス発電設備の開設に向けて取り組み始めたのは20年。バイオガス発電とは、食品廃棄物を発酵させて、可燃性のバイオガスを生成し、そのバイオガスでガスエンジン発電機を回す方法だ。従来の発電方法のように大量の二酸化炭素を発生させず、なおかつ有機残渣で発電できることから「カーボンニュートラル」な再生可能エネルギーとして注目を浴びている。
![ライフコーポレーション近畿圏物流部部長の米谷淳二氏とサステナビリティ推進部の宗大輔氏](https://diamond-rm.net/wp-content/uploads/2023/08/dcs230901_056_002003.jpg)
20年に、このバイオガス発電設備を開設したいと経営層に提案したのは、近畿圏物流部部長の米谷淳二氏だ。プロセスセンター(PC)から排出される食品廃棄物が増加傾向にあり、その解決策として提案した。米谷氏と、サステナビリティ推進部の宗大輔氏によれば、ライフの経営理念である「『志の高い信頼の経営』を通じて持続可能で豊かな社会の実現に貢献する」を実践するには、SM事業を行うなかで発生する食品廃棄やCO2の削減を図っていくべきだという。
また、今後の事業継続・拡大のためにも発電設備開設が必要不可欠だと提言したことが、経営層の合意形成を得ることにつながった。21年度のライフの食品廃棄量は1万3000トンで、その処理に要する額はそれだけで数億円にも上っている。今後、店舗数をさらに拡大していく計画のライフとしては、食品を扱う総量が増えるに比例して食品廃棄物は増加し、そのぶん廃棄費用が重くのしかかることになる。現在、食品廃棄物の処理は外部に委託しているが、将来的にはその引受先が見つからない問題にもつながりかねず「スケールデメリットが発生する状態が予測された」(宗氏)。
また、米谷氏は「当社には、社員のチャレンジを後押しする風土が根付いていることもバイオガス発電設備設立という未経験の領域にも踏み込めた大きな要因だろう」と説明する。
プロセスセンターの食品残渣を活用し運用
![「ライフ天保山バイオガス発電設備」](https://diamond-rm.net/wp-content/uploads/2023/08/dcs230901_056_004.jpg)
ライフ天保山バイオガス発電設備は、PC横の遊休地となっていた土地を買い上げ、約9億円を
サステナブルリテイリング2023 の新着記事
-
2023/08/31
「サステナ買物」消費者調査!価格が多少高くても3割超が購入に前向き? -
2023/08/31
サプライヤー、スタートアップとも連携 英テスコが進める大胆な温室効果ガス削減策とは -
2023/08/30
アプリやテック企業との連携で進む、米小売業のサステナブル施策とは -
2023/08/30
小売業のサステナビリティ推進もサポートする三菱食品の持続可能な戦略とは -
2023/08/29
「DBJ環境格付」取得のフレスタが行うサステナブル施策とは -
2023/08/29
学びやアプリ、ゲームでアクションを促す、生協のサステナブルの取り組みとは
この特集の一覧はこちら [13記事]
![サステナブルリテイリング2023](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2023/08/983215cb2b28bdd0e415fff062cdb210.jpg?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=65e7c6930654b41b87fdc1400c00c324)
ライフの記事ランキング
- 2024-06-26上場食品スーパー決算ランキング2024 好決算目立つも格差拡大
- 2024-07-08週刊スーパーマーケットニュース 「イトーヨーカドー」「ヨーク」、食料品・日用品100品目の価格を見直し
- 2024-06-05池袋駅至近のタワマン1階に出店! 「ライフ池袋三丁目店」の売場を解説
- 2024-06-26週刊スーパーマーケットニュース 日本生協連、23年度の地域生協の事業概況を発表
- 2024-06-18冷食&チラシ販促強化!ライフソコラ所沢の売場づくりを徹底解説
- 2024-06-04明暗!ライフ、U.S.M.H、アークス、2024年2月期決算分析!
- 2024-06-12小型店ながら差別化策が随所に!「ライフ池袋三丁目店」売場レポート
- 2019-06-14年商50億円超!ライフの巨艦店「セントラルスクエア押上駅前店」の現在・前編
- 2021-02-24年間40万時間の発注作業を一気に半減 ライフ全店で導入のAI自動発注システムの実力とは
- 2024-03-09ストアオブザイヤー2024、2位に入ったのはベルクのあのDS業態!?
関連記事ランキング
- 2024-06-26上場食品スーパー決算ランキング2024 好決算目立つも格差拡大
- 2024-07-11リニューアルでロピア化した「スーパーバリュー草加店」の売場を解説!
- 2024-07-01スマホ1つでレジまで…進化するスーパーマーケットアプリの現在地
- 2024-06-17フードウェイ上大岡mioka店の売場づくりを徹底解説!横浜3店目
- 2024-07-12「地場DS」でわずか5店舗でも競争勝ち抜く日東物産の戦略
- 2024-07-05人手不足時代に小売業がとるべき2つのアクションとは
- 2024-07-05あのチェーンも導入!食品スーパーの「量り売り」、成功の秘訣は?
- 2024-07-01ヤオコーの南北政策の旗艦店、伊奈店のシニア対応MD徹底分析
- 2024-06-18ローカルスーパー生き残りの一手!オギノHDが青果卸買収のねらい
- 2024-06-17ヤオコー、バローHD、サミット 24年3月期決算分析と今期の戦略
関連キーワードの記事を探す
ロピア、初のFC、初の沖縄店舗を徹底調査!本土と同じ点、違う点とは
週刊スーパーマーケットニュース Uber Eatsが人手不足と「食料品アクセス問題」を解決
上場食品スーパー決算ランキング2024 好決算目立つも格差拡大