事業そのものをサステナブルに ユニクロのマーチャンダイザーが希望した異動先
脱プラでショッピングバッグを有料化
2018年に新設された環境チームで、岡田氏は、まず廃棄物を減らすことに取り組んだ。次に、原材料の調達方針、そして、現在はサステナブルな新素材の開発を担当している。
「その頃、欧米ではすでに脱プラスチックの法制化が始まってきていました。そこで、ユニクロでも、当時、白いプラスチック袋だったショッピングバッグを紙袋に変えていこうと考え、準備を始めました」(岡田氏)
2020年9月から、ユニクロのショッピングバッグは紙製に代わり、一律10円と有料化が始まった。しかし、このスタートは順風満帆とは言えなかった。
アパレル業界ではショッピングバッグはブランド認知促進を目的とした販促物の1アイテムという扱いだったこともあり、ショッピングバッグを有料化するということには社内外からの反発がまだ強かった。特にネット上では情報が短絡的に伝わり、「ユニクロは脱プラスチックと言いながら、袋を有料化して儲けようとしているんじゃないか」などと揶揄されることもあった。
他のアパレルショップではいまだ植物由来原料のショッピングバッグを無料でつけている中で、先んじて有料化を進めたユニクロには大きな葛藤と苦労があったに違いない。
原材料の調達方針とサプライチェーンの透明性
岡田氏が次に担当したのは、原材料の調達方針を整えることだ。
それまでにも各素材担当者の間でそれぞれ基準を設けてウェブサイトなどで公表してはいたが、それらを整理し、「地球市民として、倫理的かつ責任ある原材料調達方法をめざし、原材料の社会・環境への影響を継続的に改善していく」という考えのもと、会社として一つの基準にまとめ上げた。
「たとえば動物由来の素材を使う場合は、食用の副産物であるものしか使いません。また、ダウン商品の生産に携わるすべての取引先縫製工場がRDS(Responsible Down Standard)の認証(※)を取得しており、生きた鳥からの羽毛採取や強制給餌など、非人道的な扱いを受けていないアヒルやガチョウから採取した羽毛であることが保証されています」 (岡田氏)
※RDS(Responsible Down Standard);ダウン業界で最適な動物福祉の継続的な改善を保証するための国際認証基準。
これら原材料の調達方針に加え、サプライチェーン全体の透明性を高める努力もしている。2004年からは「生産パートナー向けのコードオブコンダクト」を策定し、労働環境モニタリングへも早くから取り組んできた。コードオブコンダクトに署名した工場だけでなく、その取引先である上流工程の工場や、さらには原材料調達の最上流までを自社で把握しようと、常にやり方を見直している。現在も、自社の従業員による訪問や第三者機関による監査、第三者認証などを通じて、労働環境の確認を進めているところだ。
サプライヤーリストについても、世界全体の趨勢としても情報開示の流れもあったことを受け、2017年2月から「主要縫製工場リスト」としてウェブサイトで公開し始めた。2018年からはさらに公開範囲を広げ、「主要素材工場リスト」も公開している。
はじめからすべてが完璧にできていたわけではないが、できるところから着実に改善に向けて取り組み姿勢は、国際NGOなどからも評価されている。
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