廃棄パンや災害備蓄品を「ビール」にアップサイクル!フードロス削減の新たな選択肢とは
2021年に設立したBeer the First(神奈川県/坂本錦一社長)は、廃棄予定の食材をビールの副原料にアップサイクルする会社だ。賞味期限が迫ったパンや麺、米などを麦芽の一部として代用したクラフトビールを製造・販売する。本稿ではフードロス問題に新しいアプローチをかけるBeer the Firstの取り組みにフォーカスを当てていく。
糖質を含む食材はすべて副原料として再利用可能
Beer the Firstが事業を始めたのは21年8月。髙島屋(大阪府/村田善郎社長)に出店しているベーカリーと提携し、廃棄間近のパンを麦芽の一部として代用したクラフトビールの製造・販売を開始した。22年には東京都が募集をかけた「フードテックを活用した食のアップサイクル促進事業」の共同事業者として採択され、都が抱える消費期限の迫った災害備蓄品(乾パンやアルファ米)を副原料とするビールもリリースした。
ここでビールの製造方法を簡単に説明しよう。必要な原料は主に麦芽、ポップ、酵母、水の4つ。細かく砕いた麦芽をお湯に混ぜると、麦芽に含まれるデンプンが糖へと変化する「糖化」が起こる。できあがった麦汁を煮沸してホップを加えて温度を下げ、酵母を投入すると糖質がアルコールと炭酸に分解され、ビールができあがる。
麦芽全体の約30%までは糖質を含む副原料で代用できる。Beer the Firstではその割合を10%~30%に設定しており、副原料に使った食材はビールの味や香りにほとんど影響を与えないそうだ。同社はこれまで、観光みやげ品を製造するタカチホ(長野県/久保田一臣社長)が販売するウエハースをビールにアップサイクルした実績がある。
今年6月には三菱地所(東京都/中島篤社長)との提携により、同社が所有するオフィスビルの災害備蓄品をアップサイクルしたビールを販売する。これまでに製造したビールは提携企業による「買い切り式」を採用していたが、三菱地所との提携で製造するビールはBeer the Firstの自社商品として打ち出す予定だ。この取り組みは同社初で、三菱地所の協力のもと「大丸東京店」「リカーズハセガワ本店」などの小売店やレストランのほか、同時期に立ち上げる自社ECで販売していくようだ。