最新型ユニクロが前橋にやってきた!#2 前橋南インター店のサステナビリティ設計
ロードサイド店を進化させるという課題
「都心部には新しい店舗もできている一方で、地方のロードサイド店舗をどのように進化させていくべきかということは長年の課題でした。そこで、今回はサステナブル設計にチャレンジしました。これまでのロードサイド店舗は、設備に関してもできるだけローコストで作っていますが、それだとランニングのエネルギーコストはかかってしまう。今回の前橋南インター店では180度考え方を変え、イニシャルの建築コストが若干上がったとしても、長い目で見た時にはエネルギー消費量をセーブしたりCO2を削減していく方が価値がある、という考え方にシフトして取り組みました」と語るのは、出店開発部店舗設計施工チームの髙木肇子シニアマネージャー(以下、髙木氏)だ。
目標は、省エネで消費電力の40%以上削減
商業建築の設計においては、窓のない倉庫のように閉じていたほうが光も温度もコントロールできて効率がいいはずだ。実際、前橋南インター店の近隣にある他の量販店はいずれも倉庫のような外観である。
ところが、ユニクロ前橋南インター店は「地域の皆様に開かれた店」というコンセプトでデザインしているため、全面ガラス張りにしている。店舗設計のプロジェクトチームは、佐藤可士和氏のデザインを形にするのと同時に、省エネで消費電力の40%以上を削減するという目標を設定した。あえて矛盾に挑戦しているとしか思えない。
「何か一つの工夫や機能を導入したら消費電力を40%削減するなんていう、夢のような技術や設備はありません。竹中工務店さんの設計部、技術研究所の方々と何度も議論と実証実験を繰り返して、これで10%削減できる、これで3%削減できる、でもこれをやったらまた5%増えてしまった…そんなことをいくつも積み上げていってはチューニングして、それで初めて、理論上40%の消費電力削減という数値に着地させることができました。竹中工務店さんとのパートナーシップなくしては、実現できなかったことです」(髙木氏)
新しいロードサイド店舗の建築デザインと店づくりを成立させながらの消費電力の大幅な削減は、竹中工務店との地道な議論の積み重ねがなければ実現できなかった、と髙木氏は繰り返す。
竹中工務店にとっても、ユニクロとの仕事は他のプロジェクトとは全く違った。通常は一点物の建造物を受注して製作することがほとんどだが、ユニクロでは実際に営業している店舗で実験ができ、バ―ジョンアップしながら他の店舗に展開していく。連続性と再現性のある仕事なのだ。
エアカーテンの効果を最大限にする稼働方法
最も大きな課題は、ガラス張りにすることで自然採光を活かし照明にかかるエネルギーを削減する一方で、熱が逃げるのを防ぐこと。そこで自動ドアの上に採用したのはエアカーテンだ。
「ただエアカーテンを付けるだけでなく、『ユニクロ流山店』で煙を使った実証実験を行って、エアカーテンの効果を最大限にできる稼働方法を見つけ出しました。ポイントは、外側の気圧と店舗内の気圧のバランスです。それをコントロールすることではじめて、ドア解放時の外気流入と温度調節された室内空気の流出を抑制する効果が最大化するわけです」(竹中工務店 東京本店設計部アドバンスデザイングループ長の花岡郁哉氏、以下花岡氏)
店舗での実験によって、エアカーテンのメーカーでも知り得なかった詳細なデータを取ることができた。その検証結果は、今年、建築学会で竹中工務店から発表される予定だという。
人間の目に合わせて明るさセンサーを調整
店内照明を節電するために、天井に明るさセンサーを設置した。この調整も苦労した点だ。
「明るさセンサーも、数値上は十分な照度が取れていたとしても、やはり人間の目の感じ方とは異なるため、何度も実証実験を重ねました。明るいところから急に屋内に入ると一瞬暗く感じたりしますよね。我々にとって必要な明るさというのは、お客様が商品をきちんと見られることが大前提ですから、それを担保しながら省エネを実現するバランスを見極めるのが一番大事なのです。そして店内の照度設定をいくつか設けて、入ってくる日の光によって自動的に切り替わる、というようにしています」(髙木氏)
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