「サステナブル提案」はコストじゃなく利益!土屋鞄製造所が若年層を取り込んだ手法とは
ヒントになったのは自社の新卒採用
「そんなときヒントになったのが、土屋鞄の新卒採用面談だ」と土屋鞄製造所KABAN事業推進本部本部長の中橋竜矢氏は振り返る。2021年に行った新卒向けの面談では、多くの就活生から「環境に対する配慮をどう考えているか」という質問があり、普段、洋服やバッグを買うときは『大量生産・大量消費ではなく長く使えるものを選ぶ』という意見が多かったという。こうした経験が、土屋鞄製造所のサステナブルな施策を後押しした。
「若い世代にリーチしたうえで当社の商品を選んでもらうには、環境にしっかりと配慮したスタンスを明確に伝え、実践していくことが不可欠だと考えた」(中橋氏)。
土屋鞄製造所は既述の通りグローバル展開も進めている。台湾や中国などのアジア圏に進出するほか、ECサイトは早期から英語に対応している。いうまでもなく、欧米市場は環境への意識が高い消費者が多い。安くていいものや、ただ質の高いものを求めるのではなく、エシカルなものづくり、エシカルな消費に高い価値が置かれている。環境配慮型のモノづくりを進めることは、こうしたグローバル市場においても同社のプレゼンスを高めていくために欠かせない要素ともいえる。
また、中橋氏は、土屋鞄製造所は元々サステナブルなものづくりとプロダクトを提供してきた自負があると話す。「なぜならランドセルは子供たちが6年間使うものであり、長く使っていただく丈夫さがプロダクトの欠かせない要素だからだ」。
そのため創業時から「手入れしながら長く使ってもらう」ことを念頭に置いたモノづくりを行ってきた。つまり、土屋鞄製造所は、SDGsやサステナブルといった言葉が世間に浸透する以前から、持続可能なものづくりに取り組んできており、サステナブルなものづくりのDNAが脈々と受け継がれていたのだ。