良品計画のESGの取り組みを具現化した旗艦店・MUJI 新宿、得られた大きな成果とは

棚橋 慶次
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都内でも最も往来の激しいアジア屈指の繁華街、新宿。「新宿三丁目」駅から徒歩で2分も離れていないところに、良品計画(東京都/堂前宣夫社長)が運営する「MUJI 新宿」「無印良品 新宿」は立地する。この2店舗がリニューアルオープンしたのは2021年9月のこと。そのうちMUJI新宿は、環境や社会の課題に目を向けた商品・サービスの特化した同社のフラッグシップショップという位置づけの店舗だ。
本稿では、新装オープンからもうすぐ1年が経とうとするMUJI 新宿の取り組みとその成果についてレポートする。

MUJI新宿の外観

良品計画にとって「SDGs」とはなにか

 「無印良品」は、もともと西友ストアー(現・西友)のプライベートブランドとして1980年にスタート。89年に法人化し、誕生後から10年後の1990年に西友から営業権譲受により独立、現在の姿となった。

 2022年現在、国内外に1000店舗以上を展開するグローバル企業である同社は「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」(企業理念より抜粋)を考えた、商品やサービス、店舗、あるいは活動を行うことで、「感じ良い暮らしと社会」を実現していくことを企業理念に掲げている。

 良品価値の事業活動では、「競合他社より優れている」といったような相対的な価値ではなく、あくまで絶対的価値の追求に重きを置いている。そんな同社において、商品や店舗は一般的なクオリティだけではなく、「倫理観」が求められる。たとえば商品には、「資源循環」「自然共生」といった要素が求められ、店舗はただの売場ではなく、地域あるいは社会の課題をともに解決するコミュニティの場であるのだ。

 近頃は多くの企業はSDGsを推進し始めているが、良品計画にとってのSDGsは「事業活動そのもの」であると言っていい。

 一方で、上場企業である以上、経営に際しては当然、成長性・収益性を高めていくことが求められ、株主に報いる必要がある。業績向上と企業理念の追及とのバランスをとりながら進化を続けてきたことが良品計画の躍進につながっている。

MUJI新宿の地下1階には、店内レストランCafé&Meal MUJIも入る

リニューアルオープンのねらいは?

 とはいえ、SDGsが世間一般に定着していない中では、通常の店づくりの中でそうした要素を前面に押し出しては売上にもつながってこない。そうした中で良品計画は、企業理念をとことん追求した店舗の開業に踏み切る。それがリニューアルオープンしたMUJI新宿だ。

 直線距離で100mほどしか離れていない場所にある「無印良品 新宿」は、コスメや冷凍食品、お掃除グッズといった、消費者の暮らしの役に立つ日常づかいの商品を強化した一方で、MUJI 新宿では、環境保全や社会課題解決、アート・デザイン、コンセプトを体現した売場づくり、品揃えに力を入れる。

 この新宿の2店舗が相互に連携することで、日常的なショッピングから地球の未来に目を向けるきっかけづくりまでを創出し、消費者の暮らしに役立つ存在になる、というのがリニューアルのねらいだ。

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