消費二極化でアパレル企業は「どの領域」で戦うべきか?立ち返るべきファッションの本質とは
「人をワクワクさせる」ことが、不況打破の突破口になる
もうひとつ、議論をしたいテーマは「文化の破壊」である。「所詮ファッションなのだから、何が流行ろうが、それは消費者の自由だ」という考え方もあるが昨今のアパレルブランドを見ていると、ほとんどがユニクロの真似のような商品ばかりで、中にはThe North Faceのような絶倫ブランドもあるにはあるが、思い出しても、その程度しか頭にでてこない。
雨後の筍のように立ち上がるサステナファッションや、機能性重視の似かよった服ばかりを見ていると、日本が構築した「無駄の文化」がなくなっているように思う。実際、日本は機械式時計の時に大きな間違いを犯した。
日本はかつて、「時間の精度」という機能性を重視した競争にクオーツを持ち出し、一気に市場を席巻した。そこでクオーツ技術を開発したセイコーは特許技術をオープン化したのである。これによりクオーツ時計が劇的に普及した一方、中国などアジアの国に模倣され数百円で製造が可能になり、日本とアメリカの時計産業は壊滅状態に陥った。
着目すべきは、「クオーツショック」を辛くも生き残ったスイスのその後の戦略だ。スイスは現在、ややApple Watchに押され気味ではあるが、ロレックス一社で日本の機械式時計すべてを併せても叶わないほど隆盛を誇っている。
スイスは時計を、「時を見るものでなく、ジュエリーである」と再定義したのである。つまり、私のブランド戦略論的に言えば、機能的価値から情緒的価値へ転換し、競争の軸をずらしたわけだ。だから、世界中の人は、人をワクワクさせるスイスの時計に大枚を払うのである。
長々と書いたが、何が言いたいのかというと、今一度、ファッションとは何かという本質に立ち返り、考えてみるべきだ、ということだ。私は、LVMHがトヨタの利益を抜いたように、イタリアがデフォルトに陥ったとき、空港にジョルジオアルマーニの看板をでかでかとだし、世界中からフィレンツェに人を呼んでファッション大国の地位を確立したように、日本人は必ずやこの不況を脱するものと信じている。
デフレ、低収益からの脱却劇はどの事例をみても、数字で計れないもの、つまり「人をワクワクさせる」コトがその契機となっている。「人がワクワクする装いとは何か」を再定義し、提案することが、この不況を脱するために必要であろう。
一方で、そうしたことも考えず、サステナファッションの如く、草や木を使って服をつくったり、ユニクロの真似をして防寒着をつくったりしている多くの企業の現実をみると、このまま日本からファッションは消えてなくなるのではないかという危惧も、残念ながら抱かざるを得ないのも事実である。
本日はつれづれに思うことを話したが、不況にあえぐファッション業界の方は今一度、消費者の購買リテラシーが向上するなか、低収益から自社が脱却を図ろうというとき、一体どの領域で戦うべきかを考えてほしい、ということである。
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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