他のスーパーとは別物に進化!スゴいローカルスーパーの生存戦略とは
大手の模倣では生き残れない時代に
フィリップ・コトラーは、企業の業界における立ち位置に応じて戦略が変わるとして「戦略ポジショニング」を提唱した。日本では「競争地位戦略」と訳されることが多く、以下の4つに分類される。
❶リーダー:業界のトップ企業が、自社のシェアを維持、増大させ、2番手以下を同質化させる戦略
❷チャレンジャー:首位をめざす2~3番手企業が、トップ企業とは異なる方法でシェアをとる戦略
❸フォロワー:業界中位以下の企業が、トップ企業の模倣をすることで効率的に収益拡大をめざす戦略
❹ニッチャー:専門特化することで収益拡大をめざす戦略
一見「フォロワー戦略でも生き残れそう」に思えるのだが、業界特性と状況をあてはめると、そうではないことがわかってくる。
SM業界の場合、地域ごとの食文化の顕著な違いと、生鮮のマスデメリットがあるため、本当の「ナショナルチェーン」は存在しないうえ、いまなお市場は細分化され、上位寡占化率は他業態と比べて高くない。その点を考えると、リーダーポジションにある企業はリージョナルごとに1社、肥沃な商圏を抱えプレーヤーが多い首都圏や近畿圏などの都市部は複数企業ある場合も考えられるだろう。
問題は、それ以外のポジションの企業が何社ほど存立できるかだ。
先述のとおり、人口減少と業態の垣根を越えた競争が激化するなかでは、特定の商圏内で利益を残せるSM店舗の数はどんどん減っていく。つまり質的経営資源に乏しく、大手の模倣にすぎないフォロワー戦略のままでは、年々パイが小さくなるなかで「生き残りの椅子」を得られなくなる可能性が高いのである。
となると多くのローカルスーパーが生き残るには、リーダーにはない強みを何とか身につけてチャレンジャーに躍り出て競争に勝つことをめざすか、大手とは競争の次元そのものをずらして、圧倒的な差別化を実現するニッチャーを選ぶかが有力な選択肢ということになりそうだ。
フォロワーからチャレンジャーに移行するのは容易ではないが、すでにいくつも事例がある。
その最たる例が、2013年度の年商560億円から、そのわずか5年後の18年度に1356億円まで拡大したロピア(神奈川県/髙木勇輔代表)だ。それまでは神奈川県地盤の精肉が強い「ローカルスーパー」だったが、SMでもDSでもない、品揃えを極端に絞り込みながら大容量の商品を低価格で大量販売し、買物の楽しさをお客に植え付ける「ロピア」という業態の開発に成功した。それが5年間で242%増という驚異的な成長の原動力となり、全国へ次々と出店。いまやリーダーポジションすらうかがう売上4126億円(グループ全体、24年2月期)まで成長している。
SPA(製造小売)という圧倒的な強みを背景に、究極のニッチポジションを自認するのが神戸物産(兵庫県)だ。というのも、沼田博和社長は「『業務スーパー』だけでは商圏内のニーズを満たせない」と断言しているからだ。王道のSMがあり、それでは満たせないニーズを業務スーパーが満たす「補完関係」を前提とする戦略というわけだ。
このように、いまや大手といえる規模となったこれら後発企業の成長の原動力は「大手と違うことをする」「大手と同じ土俵で戦わない」ことにある。これこそがまさにローカルスーパーが打ち出すべき戦略だ。
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