新中期計画は株主の期待に応えているか?好決算発表後、しまむら株価が下落した理由

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新中期経営計画2027の概略

しまむら

  まず新中期経営計画2027の概略を確認します。

 数値計画は最終年度となる2027年2月期に売上高7,190億円(2024年2月期6,350億円)、営業利益660億円(同553億円)、営業利益率9.2%(同8.7%)、ROE8.0%程度(同8.8%)、国内出店計画累計150店舗(24年2月期までの3年累計89店舗)です。

 しまむらは3つの方針を示しています。

  1. 成長戦略:
    • 事業ポートフォリオの再構築
    • 既存店売上の底上げ
    • 商品力の強化
    • 販売力の強化
    • 出店・再配置・改装の拡大
    • EC事業の拡大
    • 新規海外事業への挑戦
  2. 基礎と基盤の強化:
    • 人材戦略
    • デジタル化による生産性向上
    • サプライチェーンの再構築
  3. ESG活動への取組み

 資本政策についてまとめると以下の通りとなります。

KPI

  • 資本効率:ROE0%程度、株主資本コストを上回る水準
  • 株主還元:配当性向0%程度 DOE3.0%程度
  • 財務安全性:手元流動性比率4-6ヶ月程度

経営資源配分

  • 成長投資:経営資源の50%程度を配分
  • 株主還元:上記にある通り、配当性向を25%から35%へ引き上げ、DOEを導入
    筆者注:DOEは株主資本の額に対する配当の比率。配当性向で配当額を決める場合、利益の減少がそのまま配当額の減少につながるが、DOEは株主資本というストックに対して配当額を決めることになるため、配当性向との併用において配当額を下支える効果が期待される
  • 内部留保:自己資本比率80%以上

中期経営計画2027は実質「成長投資拡大」宣言

 詳しい施策は会社の開示資料をご覧いただくとして、筆者の印象を一言で述べるとこれは「成長投資拡大」宣言であるということです。

 しまむら事業を中心に、商品力、マーケティング力の底上げとデジタル化対応に手応えを感じているのでしょう。過去3年間、経営資源のうち10-20%を「既存の延長の投資」に充当してきた経緯から見れば、今後3年間の投資額が経営資源の50%へと2〜3倍増することは大きな変化です。

 その中身も、新規出店、改装とスクラップ&ビルド、物流センターである商品センター・ECセンター への投資などなど「持続的成長に向けた投資」へとシフトすると宣言しています。

 店舗に関しては都市部への出店を強化するとのことですし、バックヤードの投資については売上高8,000億円への対応をすると述べています。

 事業基盤が堅牢であれば投資を増やし事業規模を、そして企業価値を最大化すべきです。とくに財務体力に余力がある同社はそれを生かす好機到来というわけですので、この「成長投資拡大」宣言を大いに歓迎したいと思います。

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記事執筆者

都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。

米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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