イオンのツルハ株取得が促すドラッグ業界再編と「その後」のシナリオとは
親子上場のあり方が問われる
筆者もこのような業界再編ストーリーに蓋然性を感じます。
そして、同時に筆者が気になることは、これが「イオンの親子上場の在り方」に一石を投じるか否かです。
ツルハのケースでは、イオンがオアシスの株式を引き取ってもその持分は26%程度(オアシスの保有持ち分は約13%)と言われ、3分の1の議決権には足りないようにみえます。イオンは過半の議決権を確実に握るまではツルハの株主であるアクティビスト達(アクティビストはオアシス以外にもいる)とのコミュニケーションにリソースを割くことは避けられないでしょう。結局のところ、イオンが主体的にドラッグストア事業を再構築し、イオンに有利に業界再編を主導したいのであれば、財務体力次第ではありますがツルハの議決権の3分の2以上、実質的には完全子会社化することがシンプルだと思います。
そして、イオンの持分が50.5%程度で親子上場しているウエルシアホールディングスにも当てはまる話です。
イオンは、今回のツルハの件で、親子上場にある中核子会社を順次完全子会社化していくという決断に実質的に迫られているのではないでしょうか。
24年は日本企業の親子上場解消の
最終ラウンドになるかもしれない
一部の企業では金策を兼ねて親子上場を進めている事例もありますが、大局的に見ると親子上場は解消の方向にあります。日立のように、完全子会社化と完全分離との線引きをしっかりやり、中期的に重要な子会社は100%親会社の管理のもとで事業ポテンシャルの最大化を図るという方針を資本市場は評価していると思いますので、他社も多かれ少なかれこれに倣っていくと思います。
小売業界でいえば、イオングループが親子上場による連邦経営を良しとしてきたわけですが、ツルハの一件で経営方針に変化が出てきて不思議はありません。
そのほか、三菱商事とローソンの親子上場のあり方も早晩スポットライトを浴びると考えます。
親子上場の整頓が最終局面に入るのか、今年の重要テーマになりそうです。イオン、三菱商事に注目したいと思います。
プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、
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