2023年のアパレル大予測 外資による買収加速・DX失敗・中国企業に完敗、が起こる理由
進む日本買いと外資に奪われる日本の宝
アパレル=オワコンという根拠のない空気とバブル期から数えて2度目の「1ドル=150円」という超円安も手伝い、ブランド力や価値のある不動産の「日本買い」も進んだ。
PEファンド(Private Equity Fund おもに、非上場株を買い上場させることで利ざやを稼ぐ投資会社)は、立て続けに日本企業を買収していった。
T-CAP (ティーキャピタルパートナーズ)はストライプインターナショナルを買収。続いて、ヨドバシ・フォートレス連合による西武・そごうの買収があった。そして、極めつけは、巨額の2000億円で、ベインキャピタルがマッシュスタイルホールディングスを買収した。
日本政府の放置プレイによりSDGsがアパレル企業を殺してゆく
このようなアパレル業界に押し寄せたのがSDGs(持続可能な開発目標)である。
私は、SDGsを否定する立場ではないが、この世の中の大きなうねりの裏には、「米中経済戦争」があったということを理解しておきたい。
「環境破壊第2位の産業」という汚名を着せられたアパレル業界を、日本政府は見捨てたかのように無視を決め込んだ。どっちつかずの態度を取った結果、どの企業も山のように中国綿糸を使ったシャツなどを輸入しているにも関わら
このように「国家」から「企業」が攻撃を受ける時代になった。何をしようが全く環境破壊にも人権侵害にも関係ないほどの小粒な日本の零細アパレルが、原料組成からトレーサビリティを約束し、原料代が通常の3倍もするような素材を使わざるを得ない状況に陥った。。それでも、上代を価格に転嫁することはできず、ロシアのウクライナ侵攻と円安による原料高のダブルパンチとなり、赤字が相次いだ。
さらに、「消費者が必要なものだけをお届けする」という、そもそも無理な約束をした結果、現場では「無駄なQR」が加速し、工場の稼働率を低くしてしまった。その結果、海外工場は儲からずに手間ばかりかかる日本向けの仕事を敬遠するようになり、「日本向けのリードタイムは半年から一年」が常態化。アパレルの発注は一年前に行う「丁半博打」と化し、いっそう余剰在庫が増えたのである。直貿比率をあげていったアパレルほどリードタイムが長くなり、SDGsが反作用を起こした年だった。
2023年のアパレル産業の行方 概要
このように、2022年の課題を分析すれば、23年度に日本のアパレル企業がすべきこと、進む道はきわめて明確だ。
ひと言で言えば、似たような企業が工場、素材、物流などのサプライチェーン、加えて人事、総務、経理などのバックオフィスを共有化し、産業効率を上げて最低コストを実現しながら、日本の東京、神戸などのファッション感度の高い都市を「ショールームシティ」とし、成長著しいインドネシア、タイ、ベトナムなどで売りさばく、いわゆるTokyo showroom city戦略で成長することだ。
「シーインの逆モデル」もありうる。また、D2Cによる越境三国間ECを組み立てるのも一案だ。それもグローバル基準の本当のD2Cだ。
世界で日本のブランドが受けているのは、無印良品のような「禅」の世界を連想させるミニマリズムの境地のものか、TOKYO BASEのように、コンテンポラリーモードともいえるファッションのいずれかである。
こうした分析をしっかり行い、海外の成長市場で日本の衣料品が差別的に評価されているポイントを明確にする。前回紹介したようにAIを使えば、「売れ筋」から、我々人類が見たこともないようなデザイン企画がいくらでも量産できる時代なのだ。日本的テイストをパラメータ化し、無限に「日本的ヒットアイテム」を量産できる。
これが、楽観シナリオだ。ただ、そう簡単にはいかないのが、がんじがらめのアパレル業界である。現実シナリオを見ていこう。
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