グループシナジー創出にセブン&アイとの連携強化……三井物産が描くリテール戦略のすべて
「ラーメンからロケットまで」。こう形容されてきた総合商社。その事業領域は多岐にわたり、扱っている商品・サービスもさまざまだ。三井物産(東京都)には金属資源やエネルギーをはじめ7つのオペレーティングセグメントがある。7セグメントの一つ、生活産業セグメントでは、傘下に食料本部、流通事業本部、ウェルネス事業本部の3本部を抱え、食料、食品、マーチャンダイジング、リテール、ウェルネス、ヘルスケア、医薬、ホスピタリティ、人材、ファッション・繊維といった広範な分野で事業を展開する。
中間流通子会社4社を資本統合
総合商社は2000年ごろを境に、企業に出資し投資収益を得る事業投資を拡大し、従来の売買仲介中心のビジネス形態を大きく変えてきた。その結果、流通業界での資本系列化も進んだ。三井物産の場合、三菱商事(東京都)や伊藤忠商事(東京都)と異なり、小売では1.8%を出資するセブン&アイ・ホールディングス(東京都:以下、セブン&アイ)と提携関係にあるのみでマジョリティ出資する例はないが、卸では三井食品(東京都)をはじめ小売・外食向けの中間流通機能を担う100%子会社を抱える。
三井物産は、この卸子会社を2020年6月、三井物産が全額出資で新設した持株会社、三井物産流通ホールディングス(東京都)の傘下に資本統合した。持株会社にぶら下がるのは、三井食品、ベンダーサービス、リテールシステムサービス、物産ロジスティクスソリューションズ(いずれも東京都)の4社だ。三井物産流通事業本部戦略企画室長の松岡大志氏は「4社統合で温度帯物流をはじめ物流機能を高度化・先鋭化し、大手食品卸に遅れを取らないように規模を拡大していく」と話す。
すでに2021年には、三井食品が大阪府に汎用機能と共配機能を備えた近畿統合物流センターを開設し、規模拡大に向けた取り組みを始めている。一方で、物流拠点の統廃合や配送網の共有も進める。すでに一部のエリアでは拠点統合を実施しており、今後も物流拠点の重複を解消し、シナジーを創出していくという。
グループ企業との連携で商品開発機能も強化へ
さらに、商品開発機能とグローバル調達力を強化するため、2020年4月に設立された三井物産リテールトレーディング(東京都)との連携も深める。同社は三井物産の輸出入業務を集約し、海外調達した食材を外食・小売・食品メーカーに販売する。今後は三井物産流通ホールディングスとの連携を強化し、海外調達の仕組みを構築していきたい考えだ。
これまでも三井物産グループでは冷凍食品の製造事業に取り組んでおり、大手外食チェーンの期間限定メニューに使用するライスバーガーのバンズを東京・神奈川の店舗に納めている。今後、三井物産リテールトレーディングとの連携強化を通じて商品開発機能を高め、大手の外食・小売向けの留型商品や期間限定商品を増やしていく方向だ。