ファーストリテイリングがグローバル化で追求する情報製造小売業の究極のカタチ
循環型企業へ変態し、持続可能な製造小売業へ
これらと並行し、同社は循環経済に向けた変革にも挑む。購入された商品を回収し、再利用。商品を作って購入してもらうという一方通行の事業領域から脱却し、“サステナブルな情報製造小売業“として循環経済の実現にも取り組む。大量生産・大量消費時代の次を見据えれば、いいものを適正価格で販売するというのはもはや必要最低条件でしかない。いかに無駄なく、いかにニーズに合わせ、さらにいかに再利用するかが、製造小売業として重要な差別化要因となる。グローバル化を加速させる同社は、そうした環境変化や社会的ニーズを強く意識している。
「世界中のさまざまな国の固有の歴史や文化、習慣などを深く理解し、それぞれの国の社会の発展、人々の暮らしに貢献し、その国の皆様に最も愛され支持されるブランドになる」。同時に「事業を通じ、より良い世界をつくっていく」と高らかに宣言しているのがその証左だ。
環境や社会に不利益をもたらすような行為や行動は徹底的に排除し、その上で企業として一定の利潤も追求する。理念が崇高なだけに少しでもほころびがみつかれば、大きなしっぺ返しが来る。グローバル企業を目指す過程で相手になるのはもはやマーケットでなく、社会全体といえるのかもしれない。
持続可能な成長スキームの確立がグローバルで成功する道
品質と価格という二律背反を覆し、1990年代に躍進した同社が挑む「グローバル化と無駄の排除」の同時進行。難易度はさらに跳ね上がるが、柳井正会長兼社長の覚悟はそのはるか上を行っている。
「扉を閉ざして成功した企業はありません。国を閉ざして繁栄した国もありません。特に日本人、日本企業は、こういう時代だからこそもっとグローバルに打って出て、世界中の志ある個人・企業と力を合わせ、お互いに利益があり持続可能な成長の仕組みをつくることが必要です。そこには、日本人、および日本という国の将来がかかっています。難しい問題は山ほどありますが、それ以外に日本の生き残る道はありません」
同社が“究極の普段着”とする「Life Wear」が世界の普段着になるころ、どれほど世界が変わっているのか。もはやアパレル企業の次元を超えた壮大なチャレンジの行く末から俄然、目が離せない。