[東京 15日 ロイター] – 資生堂の魚谷雅彦社長はロイターとのインタビューで、沈静化しつつある新型コロナウイルス後の事業の回復は、来春から夏ごろとみていることを明らかにした。
国内市場はワクチン接種が進み、治療薬が登場してから、主力の中国市場と訪日客は来年2月の北京五輪後に動き始めるとの見通しを示した。
魚谷社長はコロナ前の日本経済を支えたインバウンドについて、訪日客最大の割合を占める中国の方針が北京の冬季五輪終了まで見えてこないと指摘。「経営者としてはミニマムに見ておく。あまり依存しないように、国内需要のオンラインビジネスや商品開発の見直しを強化している」と述べた。五輪後に中国政府が移動制限を緩和する可能性があるとし、「来年の夏が1つの転換期だ」と語った。
中国経済は足元、景気減速やコロナの規制強化による影響が懸念されている。魚谷社長は、絶好調だった海南島の免税店も7─8月は「トラフィックが落ちていた」と説明。一方で、「まだまだ経済成長する国。化粧品産業も2ケタ伸びるのは間違いない」と述べた。限定商品の投入や日本製というブランド力を活かし、競争激化の影響を最小限にとどめたいとした。
資生堂は2023年に売上高1兆円、営業利益率15%という目標を掲げているものの、21年1―6月期の営業利益率は4.5%と大きく乖離(かいり)し、コロナ前の19年12月期の営業利益率10.1%から低下した。しかし、日用品事業や低収益ブランドを売却したことで、売上高は落ちるが利益率の改善を見込んでいる。
魚谷社長は同目標について、「コロナの影響が収束し、経済活動がノーマルに戻ることが前提」と説明。「昨年計画を立てた時点では、こんなに日本のコロナの状況が長引くと誰も思っていなかった。日本で今のような状況が続いていれば厳しくなる」と述べた。
ただ、欧米は正常化に向け動き出しており、治療薬の登場などで「日本の経済活動が欧米並みになれば、化粧品産業も一気に回復するとみてよいと思う」と語った。「期待したいのは来年の春」とし、日本事業の回復も15%目標に貢献するとの見方を示した。
へアケア商品「TSUBAKI」を含む日用品事業や、メイクアップブランド「ベアミネラル」を売却するなど急ピッチで進めてきた構造改革は、「9合目を超え、メジャーな部分は終了した」という。今後は成長に向けて舵を切る。自律的な成長を優先するとしながらも、自社で保有していない領域や技術は米国や中国で買収も検討する。
魚谷社長は、食事や栄養、睡眠などが肌の状態に影響することから、「医薬品関係の会社や食品会社などの知見の組み合わせを行っている」とも語った。