追悼 布施孝之キリンビール社長(3)アサヒビールの背中を追い全国行脚、そして布施改革
布施改革に先駆けて全国行脚
2017年4月からは、改革に先駆けて全社を挙げて現状認識を統一すべく全国行脚した。事務所に赴き、対話集会を開き、その後には缶ビールと乾き物で2WAYコミュニケーションを促進し、何か事があれば、直接メールをくれるようにお願いして回った。「キリンビールは今、長期的“負け戦”の中にいる。生産部門には過去20年間で3000人以上の減員を実施し。大きな痛みを強いてきた。変化の激しい時代は何が起こるかわからないから、赤字転落も起こりうる」と全社員で共有した。
そしてそこから脱出するためには、お客を一番に考える組織づくりが重要であるとし、すべての判断基準をお客にした。変化の激しさを実感している現場を重視し本社は、そのサポートに徹する体制構築を図った。上司や競合を見て戦略を決めるのではなく、お客の期待や本音をダイレクトに汲み取り、それに応えることを一義とした。当たり前のことであり、企業理念にも記されていることだ。しかし、現実問題として機能はしていない。だから、「理念を額縁から出そう」と訴えた。
もうひとつは「布施塾」の開講だ。企業はゴーイングコンサーン(Going Concern)であり、自分たちの世代さえよければいいというのはいけない。だからヒトを残すべきと考えたのだ。2018年からスタートした「布施塾」は、毎春・秋、各20人ずつ、課題図書を通じて論じ合う。セブン–イレブン・ジャパンの古屋一樹会長(当時)やネスレ日本の高岡浩三社長(当時)など錚々たる面々を特別講師として招聘した。
さらに、積極的にヘッドハンティングも実施しプロパー主体の社内に新しい風を吹き込んだ。(続く)
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