ケーズデンキ、家電特化の「がんばらない経営」がコロナ禍で過去最高益となった必然とは

油浅 健一
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丁寧なサービスで高額商品が好調

 コロナによって、消費者の外出が控えられ、消費の場所がいわゆる住居を拠点とする生活圏へ移動した。この流れが、ケーズHDの大都市周辺のベッドタウンへの積極的な出店戦略とシンクロしたことは、ある意味でラッキーといえる。だが、これは同社が以前から市場や競合の動きに左右されず、我が道を進んできた結果でもあり、“必然”というほうが適切かもしれない。

 213月期で大きく売上に貢献したのは、4K8Kの大型商品を中心とするテレビ(対前期比119.8%)、パソコン・情報機器(同116.9%)、冷蔵庫(同111.1%)、洗濯機(同116.7%)、調理家電(同116.7%)、クリーナー(同122.3%)、エアコン(同105.7%)など。これらは比較的高額で、しっかりと実機を確認し、スタッフからの説明を受けて買いたい商品だ。

ケーズHDの21年3月期決算では、テレビやエアコンなど高額商品の売れ行きが好調だった
ケーズHDの21年3月期決算では、テレビやエアコンなど高額商品の売れ行きが好調だった(同社決算説明資料より)

 リフォーム事業や家具販売など、家電量販店業界では経営の多角化が進むなか、ケーズHDは家電特化型の企業だ。居住地から至便の地にあり、従業員の丁寧なサービスが受けられ、売場に体験コーナーがあり、かつ「新製品が安い」。安さだけが魅力のECでは購買に踏み切れない消費者にとって、結果的に丁寧なサービスが受けられるケーズHDが最善の受け皿となり、お客を呼び込んだことは容易に想像がつく。

 同社がサービス向上の肝と捉える人材に対しては、223月期に定期昇格・昇給に加え、体系の是正・格差の是正を実施し、給与の引き上げを行う予定だ。さらに、同社グループの人材派遣業を営むケーズキャリアスタッフ(茨城県/鈴木一義社長)では、能力あるシニア人材の再雇用も促進し、“本当の親切”を提供する地盤の一層の強化を図る。

 あわせて、214月からは「EC商品部」を新設。213月期に売上が2倍に伸長したECにもしっかりと人員を割き、体制を整備する。

 

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