ヤマダホールディングス、最盛期に迫る利益水準なのに株価低迷の理由と復活のシナリオ
模索の10年が続いた5つの要因
同社の業績が家電エコポイント後の10年間伸びなかったのは、業界構造の変化が複合的に生じたからだと筆者は見ています。いくつかあげてみましょう。
- 家電量販店業界の集約が進み、出店余地が少なくなったこと
- 家電エコポイントで需要の先食いをしたこと
- PCやデジカメの機能を集約するスマホ・タブレット端末が台頭し、その販売チャネルが通信キャリアチャネルであったこと
- 家電メーカーの集約が進み、サプライチェーンの主導権が家電メーカーに戻ったこと
- ECチャネルが定着したこと
こうした事業環境の変化に対応し、同社は買収による多角化を進めました。ハウスメーカーのエス・バイ・エル(現ヤマダホームズ)、建設会社のヒノキヤグループ、家具販売の大塚家具などがこれにあたります。
しかし利益面で際立った成果が見えず、試行錯誤が続いているなというのが正直な印象でした。
ヤマダ、持株会社制で進む体制整備
しかしこの試行錯誤が一旦終わったかもしれないと筆者が感じたのは、2020年10月の持株会社制移行とその後の体制整備です。筆者が特に気になっているのは次の点です。
– ホールディングスの社名に「電機」がないこと
- セグメントをデンキ・住建・金融・環境・その他に分け、傘下の子会社の整理を進めたこと
- 子会社トップの人事が信賞必罰と思われること
- IR全般が改善し、セグメントごとの業績開示が充実したこと
- ESG(環境・社会・企業統治)対応も明確になり、住宅・家電一体の省エネ対応やリユース・リサイクルの自社完結の道筋ができたこと
こうしてみると、2021年3月期は利益額が回復し、さらに経営体制が刷新される重要な年だったと思います。
椎名則夫の株式市場縦横無尽 の新着記事
-
2024/09/24
クシュタール買収提案でセブン&アイがいますぐすべきことと3つのシナリオとは -
2024/08/19
円安修正で国内成長力に再注目!良品計画に広がるチャンスと課題とは -
2024/07/08
アインHD、フランフラン買収で変わる?株主総会の争点とは -
2024/06/07
連続増収増益途切れ、株価下落のニトリHDの意外な実態と今後 -
2024/05/09
小売業界新たなフェーズへ!平和堂の株価上昇が意味することとは -
2024/04/08
新中期計画は株主の期待に応えているか?好決算発表後、しまむら株価が下落した理由
この連載の一覧はこちら [60記事]
関連記事ランキング
- 2024-09-27市場規模伸び悩むも上位寡占進む 家電量販店の市場規模&市場占有率2024
- 2021-05-19気が付けば「家電版ユニクロ」!好調ヤマダ電機が“経済圏”拡充とともに進める戦略とは
- 2020-04-02ヤマダ電機、一宮CEOが取締役を退任、相談役に
- 2021-04-02ヤマダデンキがデジタル広告事業参入、サイバーエージェントと提携で
- 2021-07-07ヤマダホールディングス、最盛期に迫る利益水準なのに株価低迷の理由と復活のシナリオ
- 2022-05-30しまむらもヤマダホールディングスに続くか 「大型自社株買い」の機が熟したといえる理由
- 2024-04-12家電量販店相関図2024 住宅に百貨店、アニメ…異業種買収による拡大進む
- 2024-09-13家電量販店売上ランキング2024 各社が苦戦する中、増収増益のヨドバシが2位に浮上