「SMの基礎力」を向上させ半径1kmのシェアアップに全力投球=ライフ 岩崎 高治 社長
食品スーパー(SM)大手のライフコーポレーション(大阪府:以下、ライフ)は、「3つの風土改革」と半径1㎞のシェア拡大を重点施策に掲げた第五次中期3カ年計画(第五次中計)の2年目を終えた。これまでの進捗状況と最終年度の方針、そして第六次中計の構想について、岩崎高治社長に聞いた。
2016年度はチャレンジングな1年
──2016年度をどう振り返りますか。
岩崎 16年度を総括すると、いろいろと新しい取り組みにチャレンジした1年だったと言えます。
まず、16年6月にはナチュラル&オーガニック商品の品揃えを強化した新フォーマットの店舗「ビオラル靭店」を大阪府大阪市に開業しました。8月には自社オリジナル電子マネー「LaCuCa(ラクカ)」を全店舗で導入したほか、50億円を投じ、埼玉県内に鮮魚・農産のプロセスセンター(PC)を開設しました。
また、「ララピー」というライフのマスコットキャラクターも誕生しました。多くのお客さまから人気を集めているだけでなく、従業員のロイヤルティ向上にもつながるなど、想像以上の効果があがっています。
──そうしたなかで、17年2月期の単体売上高は対前期比3.6%増の6527億円となりました。この業績についてはどう評価しますか。
岩崎 業績面では順風満帆というわけにはいきませんでした。とくに8月と9月については、天候不順や前年の地域振興券発行の反動などが影響して売上が大きく落ち込みました。その後、年末商戦は善戦したことで、なんとか最低限の結果は残せたかなと思っています。
既存店売上高については、16年度は同0.8%増と微増にとどまりました。4期連続で前年実績を上回ったものの、14年度の同4.3%増、15年度の同4.5%増と比較すると、伸び率は大きく鈍化しています。
──とはいえここ数年、業績は大きく落ち込むことなく順調に推移しています。その要因は何でしょうか。
岩崎 既存店の改装も積極的に進めていますし、新しいMD(商品政策)もどんどん投入しています。それに加えて、販促の強化やPC・物流への投資も行っています。そうした取り組みの積み重ねが、結果として表れているのではないでしょうか。また、日本のSM業界全体を見ても、業績が大きく落ち込んでいる企業は少なく、外部環境もそれほど悪くないと考えています。
1㎞圏内のシェアを1%でも上げる!
──16年度は、第五次中期3カ年計画(以下、第五次中計)の2年目にあたる年でもありました。中計の進捗はいかがでしょうか。
岩崎 第五次中計では、「お客様の立場で考え行動する会社」「多様な人財を活かす会社」「規律とチームワークのある会社」をめざした「3つの風土改革」を進め、半径1㎞圏内のシェアを徹底的に上げていくことを最重要課題として進めています。
現状、店舗から半径1㎞圏内における当社のシェアは10%ほどしかありません。つまり、100の需要があるとしたら、10の需要にしか対応できていないということです。その比率を1%でも上げることができれば、全体の売上は10%上がると考えています。
それを実現するためにとくに重視しているのが、「3つの風土改革」のうちの「お客様の立場で考え行動する」ということです。
小売業であれば、お客さまの立場で考えるのは当然のことでしょう。しかし、実際に行動が伴っているかというと、そうとは言い切れない部分があります。お客さまの需要が多様化しているなかで、無意識のうちにお客さまにとって不都合なことや、必要のないことをしていないか。それをあらためて見直すために、お客さまの声に耳を傾けることに力を注いでいます。
──具体的には、どのようなプロセスで顧客の声や意見を抽出し、分析しているのですか。
岩崎 約2年前に、マーケティングのプロジェクトを立ち上げました。そのなかで、座談会を開いて日頃当社をご利用いただいているお客さまの意見を直接伺ったり、インターネット上で約5万人を対象にしたアンケートを行ったりしています。
また、三菱商事(東京都/垣内威彦社長)や三菱食品(同/森山透社長)などと連携しながら、ID-POSデータの分析も進めています。以前は売上が落ちたりすると、価格訴求の強化やポイント還元など、その場しのぎの施策に走ることも少なくありませんでした。しかし、ID-POSデータを社内で活用できるようになったことで、より精度の高い対策が講じられるようになりました。