紀ノ國屋 代表取締役社長 堤口 貴子
駅構内・駅ビル内への出店を強化し、駅利用者に豊かな食生活を提案する
自社工場を活用し、顧客ニーズを商品に反映
──駅構内や駅ビルへの出店を強化するなかで、商品政策ついてはどのように考えていますか。
堤口 最も力を注いでいるのが、品揃えを充実させることです。なかでも駅利用者からの需要を見込み、総菜の商品開発を強化しています。
紀ノ國屋オリジナルの総菜は、パンと同じく東京都三鷹市にある自社工場で製造し店舗に直送しています。現在総菜のオリジナル商品数は約40SKUで、駅を利用されるお客さまの幅広いニーズに対応するためにはまだ足りないと考えており、今後も品揃えを拡大する方針です。
──総菜のメニューはどのように開発しているのですか。
堤口 工場に配置している商品企画部と、本部の営業部が連携して取り組んでいます。営業部が店頭でお客さまのニーズをつかみ、商品企画部が製造技術に関する知識と経験を生かし商品を開発します。このように、お客さまのニーズをいち早く商品に反映できる「製販一体」になった商品開発の体制ができていることは、われわれの強みの1つでしょう。
また、自社工場を24時間体制で稼動していることも大きな武器になっています。
17年7月にJR「新宿」駅改札内に出店した「KINOKUNIYA entréeルミネ新宿店」(東京都新宿区)では、新たな挑戦として、店頭に並べる時間に合わせて商品を工場で製造し、夕方の17時から帰宅途中のお客さまに向けて出来たてのパンや総菜を販売しています。そのほかの商品とは異なる配送になるのですが、JR東日本グループのジェイアール東日本物流(東京都/唐澤朝徳社長)の協力を得て実現させました。今後も工場を活用しさまざまな試みを行っていきたいと考えています。
──最近はグロサリーのプライベート(PB)商品のラインアップも広げています。
堤口 PB商品は、他社と差別化できる商品として開発を強化する方針を打ち出しています。16年度は年間で100アイテム、今年度に入ってからは7月末までで開発商品数はすでに100を超えています。
最近は、他社との差別化を図るべくPB商品を使用した総菜を毎月発売しています。
たとえば、17年7月にはPBの人気商品である、長崎県産焼きあご100%使用の和風だし「あごだし」を使ったお茶漬けの販売をスタートしました。そのほかにも、「あごだし」を使用した和風総菜やいなり寿司なども販売しています。これらは紀ノ國屋ならではの商品であり、今後も開発を進めていきたいと考えています。
接客に磨きをかけて競合他社と差別化
──競合他社とはどのように差別化を図っていきますか。
堤口 紀ノ國屋は駅構内や駅ビルへの出店においては、高質SMのなかで後発です。そういったなかで支持を獲得していくには、いかに顧客満足度を高めて、お客さまのニーズに合った店づくりができるかが重要です。そこで、これまで紀ノ國屋が高い評価を得てきた接客をさらに強化していく必要があると考えています。
接客での具体的な取り組みとしては、前述のルミネ新宿店で「プロモーションコーナー」を設けました。店舗の出入口に従業員が常駐して、おすすめの商品を提案するコーナーです。開店当日に同コーナーで試食販売した「とろける杏仁プリン」は2日間で約800個を売り上げることができました。
さらにルミネ新宿店ではレジ業務を外部に委託しています。出店を加速するうえで必要となる従業員を補完できますし、従業員が接客に集中できるというメリットがあります。最近の新店でも同様の取り組みを進めています。
接客はお客さまのニーズを知るうえでも有効です。接客をとおしてお客さまの声に真摯に耳を傾けて顧客満足度を高め、差別化を図っていきたいと考えています。