紀ノ國屋 代表取締役社長 堤口 貴子
駅構内・駅ビル内への出店を強化し、駅利用者に豊かな食生活を提案する
さまざまな店舗フォーマットで立地特性に対応
──駅構内と駅ビル内で、生鮮3品を扱う小型フォーマット「Daily Table KINOKUNIYA」の出店も開始しています。
堤口 16年3月、JR「吉祥寺」駅直結の商業施設「アトレ吉祥寺」内に1号店の「アトレ吉祥寺店」(東京都武蔵野市)をオープンしました。17年6月には2号店となる「西荻窪駅店」(東京都杉並区)をJR「西荻窪」駅構内に開店しています。
アトレ吉祥寺店は、初年度の年商目標をクリアし、西荻窪駅店は開店から7月末までの売上が計画の約120%で推移しています。とくにオープンキッチンを設けて売場を広く確保した、総菜やインストアベーカリーがお客さまの支持を得ています。
路面店は、充実した品揃えを提供してゆっくりと買物を楽しめるようにしているのに対して、「Daily Table KINOKUNIYA」は駅を利用するついでに立ち寄り、短時間で買物ができる利便性が特徴です。
アトレ吉祥寺店の場合は、店舗から北西約600mに路面店の「紀ノ国屋吉祥寺店」があります。アトレ吉祥寺店のオープン後も路面店の売上にほとんど影響はなく、うまくすみ分けができています。
紀ノ國屋は高齢のお客さまが多いのですが、「Daily Table KINOKUNIYA」への来店をきっかけに若い世代に当社の魅力を知ってもらい、ほかの紀ノ國屋の店舗も利用してほしいと考えています。
──「西荻窪駅店」では、焼きたてパンの販売やイートインスペースの設置など、新しい取り組みにも挑戦しています。
堤口 紀ノ國屋のパンは、約60年にわたって自社製造で提供している、当社の強みとする商品です。通常は東京都三鷹市にある自社工場で焼き上げて店舗に配送しているのですが、西荻窪駅店では店内調理で焼きたてを提供し好評を得ています。
イートインスペースについては、店内とテラス席を合わせて約15席を用意しています。西荻窪駅店は開店に当たり、JR東日本とともに商圏調査を実施しました。その結果、駅の中に休憩できるスペースが欲しいという要望が多く挙がったことが導入の理由です。イートインスペースは地域のコミュニティを形成する場所としての役割も果たすことができるため、今後の店づくりにおいても重要だと考えていきます。
──標準タイプのSMのほかに、さまざまな店舗フォーマットを展開しています。
堤口 当社は、SMの「紀ノ国屋」、グロサリー専門店の「KINOKUNIYA entrée」と「OMO KINOKUNIYA」、生鮮食品を揃える小型SMの「Daily Table KINOKUNIYA」以外に、焼きたてパンの専門店「KINOKUNIYA Bakery」を運営しています。
今後出店を強化していく駅という場所は、どのエリアに立地するのか、また駅の中でもどの位置に出店するかによって、客層やお客さまの需要が大きく異なります。そのため立地に合ったフォーマットで出店していく必要があります。
今後は、お客さまから支持されている商品に特化した専門店を新たに開発していきたいと考えています。駅構内では、広い売場面積を確保することは容易ではないですし、10~20坪ほどの狭い面積での出店要請も少なくありません。しかし、限られた面積であっても、商品カテゴリーを絞り込めば出店が可能です。商品力に磨きをかけて、将来的に寿司や総菜などの専門店も出店したいと考えています。
──駅構内や駅ビルに出店するなかでJR東日本と連携していることはありますか。
堤口 17年8月、JR「東京」駅構内に新しくオープンした商業ゾーン「グランスタ丸の内」に、「KINOKUNIYA entréeグランスタ丸の内店」を開店しました。
JR東京駅の「丸の内地下中央口改札」を出てすぐの好立地で、JR東日本が「地域再発見プロジェクト」の一環として立ち上げた地産品を集めた専門店「のもの」と一体になった店づくりに挑戦しました。
「のもの」の売場では、「東京駅で見つける、東日本の新たな魅力」をコンセプトに、東日本の各地で生産される銘菓や地酒、加工品などを揃えています。定期的に共同開発商品も提供する計画です。
JR東日本とは、さまざまな部分で互いの価値を向上できる、ウイン-ウインの関係を構築していきたいと考えています。