ローソン 代表取締役社長 竹増 貞信 「笑顔」と「デジタル」でボーダーレス時代を勝ち抜く
竹増 現状、朝と昼の時間は都心部を中心に、どうしてもレジ待ちの列ができてしまいます。1人当たりの精算時間を早くするにしても、レジを置く台数を増やすにしても、限りがあります。その解決策として、テクノロジーを活用し、新たな決済システムをつくりたいと考えています。すでに上海のローソンでは、セルフスキャンのスマホ決済を始めています。こういった決済システムを日本でも実現したいと思います。
私自身も朝ごはんを買おうとローソンに来たときに、レジ待ちの列があるとやっぱり買うのをやめよう、と諦めるときが何度かありました。お客さまも同じ気持ちだと思います。つまり、まだまだチャンスロスがあるということです。レジ待ちを解消するだけで売上高アップにもつながるはずです。
ラストワンマイルの攻防1万4000店舗の価値
──17年2月、ローソンは三菱商事(東京都/垣内威彦社長)の子会社となりました。それにより何か変化はありましたか。
竹増 これまでは双方にとってメリットのある取り組みを行うことが重要でしたが、子会社となって以降は、この関係性はシンプルです。ローソンの業績が上がれば、それが三菱商事の利益につながるからです。その意味では、やりやすくなったというのが正直なところです。
たとえばゴディバとのコラボも三菱商事からの提案で実現しましたが、三菱商事にマージンを払っているわけではありません。コラボ商品がローソンで売れた結果としてローソンの業績が上がる、それ自体が三菱商事の利益になるわけです。
──さて、海外では上海で約850店舗展開されています。今後の海外展開をどのように考えていますか。
竹増 海外はこれまでチャレンジするという位置づけでしたが、ここにきて会社の利益に貢献するフェーズに入ってきたと感じています。上海は18年度に1000店舗以上、早いうちに2000店舗展開したいと考えています。
──14年7月には生鮮宅配サービス「ローソンフレッシュ」を始めました。「アマゾンフレッシュ」や「IYフレッシュ」など、他社も次々と参入し始めています。どのように差別化しますか。
竹増 まずはローソンフレッシュでしか買えないという商品を増やしていきたいと思います。「クリーミーチキンドリアキット」や「魚介と鶏肉の彩りパエリアキット」など、料理の食材と調味料がセットで、下ごしらえもしている時短手料理キット「キッチント」が好調です。
また、われわれは1万4000の店舗網を全国に持っていることが強みです。それを生かし、今年3月からはECで注文した青果や精肉を店舗で受け取ることができるサービスを始めます。お客さまからは平日に自宅で受け取りにくいという声が多く、それを新サービスに反映させました。また、店舗で受け取ってもらうことで、来店してもらい「ついで買い」を誘うというねらいもあります。
──米アマゾン(Amazon.com)が米自然食品スーパーのホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)を買収するなど、国内外を問わず合従連衡が進んでいます。今後の競争環境をどのようにお考えですか。
竹増 業態を超えた競争が熾烈化しています。どの業態でも、ラストワンマイルが大事になると思います。
ローソンは40年以上かけて、国内に店舗網を張り巡らせてきました。毎日1000万人のお客さまが入店されます。この店舗網はとても価値あるものだと思います。いずれ地場の食品スーパー、EC、CVSだけが残るという時代が来るかもしれません。