ローソン 代表取締役社長 竹増 貞信 「笑顔」と「デジタル」でボーダーレス時代を勝ち抜く
健康関連商品を2割増の3500億円に
──売場を見ると、健康関連商品が目立ちます。今後も増やしていく方針ですか。
竹増 はい。17年度は健康関連商品の売上高が約3000億円の見込みです。来年はこれを2割弱増の3500億円にします。健康関連商品は引き続き、当社のメーン強化カテゴリーの1つです。
ローソンは今ほど健康が注目される前の13年10月にコーポレートスローガンを「マチのほっとステーション」から「マチの健康ステーション」に変更し、健康を軸とした事業戦略を進めるという方向性に舵を取りました。
社内では途中でもとに戻そうという話もでてきました。しかし、やっと「健康といえばローソン」という認知がお客さまのなかで高まってきて、ここまで続けてきてよかったと思います。
さらにうれしいのは、健康コンシャス(関心)が高い人ほど、ローソンを評価してくれていることです。1本で118gの野菜を使用しているチルド飲料「グリーンスムージー」や、穀物の外皮を使い、糖質を抑えた「ブランパン」シリーズ、国産若鶏のむね肉100%、国産小麦粉を100%使用した「からあげクン」など、健康コンシャスの高い方が頻繁に買ってくれています。
私も子供につられてからあげクンをよく食べます。フレーバーもいろいろ試しましたが、個人的には「レギュラー」がいちばん好きです。
──MD(商品政策)の考え方について教えてください。
竹増 とにかく、われわれは“とんがっていこう”という気持ちで進めてきました。中途半端にするのではなく、いっそ“振り切ってしまおう”と。その先兵隊が「ナチュラルローソン」です。健康特化型のフォーマットであるナチュラルローソンは今、約140店舗を展開しています。
健康志向のお客さまだけでなく、幅広い客層の受け皿としてはメーンフォーマットの「ローソン」があるので、ナチュラルローソンでは思い切って健康に振り切ることができます。
たとえば、ごはんの代わりにカリフラワーを使った「ご飯を使わないキーマカレー」や「ご飯を使わないオムライス」などの「ベジめし」をナチュラルローソンでは展開しています。これらの商品も1万4000店舗のローソンでいきなり展開することはできないですが、140店舗のナチュラルローソンだからできました。これくらいやりすぎたほうがいいのです。
ほかにも、アッパー層向けに突き抜けるフォーマットが成城石井(神奈川県/原昭彦社長)です。14年10月に買収しましたが、ローソンとのコラボなど考えなくてよい、成城石井がやりたいことをどんどんやって欲しい、とふだんから言っております。
これらのフォーマットに、バリューに突き抜けた「100円ローソン」を組み合わせることで、互いに補完し合い、あらゆる客層に対応しようと考えています。
デジタル活用でレジ待ち時間解消
──人手不足などで小売業のデジタル活用が注目されるなか、ローソンは率先してテクノロジーを導入している印象があります。デジタル活用について、どのようにお考えですか。
竹増 ローソンの社風はもともとチャレンジが好きなのです。「新しいことにチャレンジしてなんぼ」、の精神でやっています。私は「笑顔」と「デジタル」が大事だと言ってきました。デジタル活用によって、省力化と「温かさ」を実現したいと思っています。
ローソンは今、全国各地に1万4000の店舗があり、インフラとライフラインの両方の役割を果たしています。無人店舗だけではダメで、立地に応じて接客のしっかりした店舗も必要です。
とくに、地方では高齢化が進んでいます。デジタルに慣れていない高齢層のお客さまが多い地域で無人店舗をやっても意味がありません。そういった地域は、無人店舗ではなく、むしろデジタルを活用して、店員が接客に集中できるようにします。
──貴社を含め、CVS各社が経済産業省主導のRFID(電波を用いてデータを非接触で読み書きするシステム)を用いた決済システムの実証実験に取り組んでいます。
竹増 RFIDの決済システムができると流通業が大きく変わります。
ローソンは16年12月にパナソニックと共同で、「ローソンパナソニック前店」(大阪府守口市)で完全自動セルフレジ機「レジロボ®」を導入した実証実験を行いました。さらに、18年2月には「ローソン丸の内パークビル店」(東京都千代田区)にて、電子タグから取得した情報をサプライチェーンで共有する実験を行いました。
こういった実験を積み重ね、「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」に基づき、25年にRFID決済の実用化をめざしています。これらの取り組みは、無人レジの仕組みをつくりたいというより、レジ待ちを解消するのが目的です。