ビオセボン・ジャポン 社長 土谷美津子
「ふだん使い」確立し、オーガニック食品市場を拡大させる
有機栽培をサポート、生産者を「買い支える」
──日本では有機栽培農家は多くありません。どのように生産者を確保しているのですか。
土谷 すでに取引のある生産者から、知り合いの有機栽培農家を紹介してもらうなど、地道な取り組みにより契約する生産者を増やしてきました。現在契約している生産者は200軒になりました。最近は有機栽培に取り組む若手の生産者が全国的に増えてきていることも、契約する生産者を増やす後押しになっています。
契約する生産者を増やすうえで大切にしていることは、有機野菜の販売拡大に向けて「ともに取り組む」という姿勢です。商品の取引をするだけでなく、今後の販売や栽培計画についても話し合い、アドバイスを提供します。たとえば、ビオセボンの売上傾向を共有して、生産者が消費者のニーズに即した農産物を栽培できるようにしています。
また、有機栽培に挑戦する生産者のサポートも行います。たとえば、有機野菜であることを証明する「有機JAS認定マーク」を取得するには約3年間、農薬や化学肥料を使用せず、田畑を有機栽培用に転換する必要があります。つまり約3年間は、栽培の手間もかかるうえに「有機野菜」として農産物を販売できないのです。そこでビオセボンは、田畑を転換中の生産者の野菜も「有機転換中の野菜」として店頭で販売しています。このように生産者を買い支えることが、有機食品の生産者の増加や生産量の拡大につながると考えています。
──物流の最適化は進んでいますか。
土谷 物流の最適化についてはまだ課題が多く、オペレーションの改善を図っているところです。有機野菜は市場が存在せず生産者と販売者による相対取引のため、商品の配送についても生産者1軒1軒とのやり取りが必要になり効率がよくありません。そこで、それぞれの地域で生産者の農産物を集約できる拠点づくりを進めています。そうして集約した有機野菜を最終的にイオングループの物流網に乗せて、効率化とコスト削減を実現したいと考えています。
仏直輸入の商品は600品目以上、「健康」を軸とした商品を強化
──ビオセボン・ジャポンは、16年6月に仏ビオセボン社を傘下に持つ、マルネ・アンド・ファイナンス・ヨーロッパ(Marne & Finance Europe)との折半出資で設立されました。仏ビオセボン社とはどのように連携していますか。
土谷 仏ビオセボン社は、140店舗以上出店し、海外にも進出しています。そのため、商品の選定や、店づくり、経営についてなど、あらゆる部分でアドバイスしてくれています。
また、フランスから直輸入している商品については、仏ビオセボン社が扱っている質の高い有機食品を仕入れることができます。開店時、直輸入商品は250品目ほどでしたが、お客さまから好評のため拡充し、現在では2倍ほどに増えています。こうした仏ビオセボン社との連携は当社にとって大きな強みです。
──現在力を入れている商品政策について教えてください。
土谷 これまでは、有機の農産物と加工食品を中心に扱うSMとして、品揃えを拡充することに力を注いできました。日本料理に欠かせない白だしやぽん酢、お客さまから要望が多かったパウンドケーキやどら焼きといった和洋菓子などで、取引先メーカーの協力を得て有機の商品を開発し、品揃えに加えてきました。
これからは次のステージとして、お客さまの潜在的な需要を探り、品揃えに反映させていきます。
先日、来店されたお客さま約30人に、1人当たり30分ほどビオセボンについての要望を聞きました。その結果、健康を軸とした商品をもっと増やしてほしいという声が多く挙がりました。今後は、有機食品を提供することはもちろん、「減塩」などの健康を切り口とした品揃えや売場づくりに注力していきます。