阪急ブランドが浸透するエリアに絞り、深耕する! 阪急オアシス代表取締役社長 並松 誠
──各店の売場が徐々に変化していきそうですね。
並松 ただ商圏によってお客様のニーズは大きく異なります。そこは各店で指揮を執る、店長の判断を重視する方針です。
──最前線の店長に権限移譲するのですね。
並松 たとえば営業時間も、店長判断で変更してもよいと言っています。店は立地、商圏特性、競争環境により、あるべき営業時間も違うはず。私は、博多阪急で店長を務めていた時、当初、21時閉店だったところを20時に短縮しました。食品はやや苦戦したものの、改装によってお土産需要が喚起できたり、化粧品が売れるようになったりで、最終的には前年実績をクリアできました。今も、店全体では対前期比7%増と好調に推移しています。
お客さまと日々、接しているのは店の責任者である店長です。何が売れたかだけを把握するのではなく、実際にどのような人が買っているのか、またどんな買い方をしているかを店頭でよく見てほしいと伝えています。実践することで、各店各様の効果的な売り方を工夫してほしいと期待しています。
──個店対応にシフトするということですか。
並松 いえ、展開しているのはあくまでチェーンストアです。7~8割の仕事は標準化されたチェーンオペレーションにより、効率化を追求する必要があります。そのうえで、残る2~3割の部分は店長自身が考え、工夫し、店舗網全体の営業力を強化するという考え方です。
標準、小型、新型に3分類
──出店政策を教えてください。
並松 当社はこれまで、多様なエリア、立地への出店にチャレンジすることで事業拡大の可能性を探ってきました。その結果、得た答えは「阪急ブランド」が浸透しているエリアに注力するということ。具体的には阪急電鉄沿線、大阪では市内から府北部にかけてのエリアで店舗展開を強化、マーケットを深耕します。
今年4月には「キッチン&マーケット ルクア大阪店」(大阪市北区)と「阪急オアシス中之島店」(同、以下、中之島店)をオープンしましたが、いずれも出したのは阪急ブランドが定着しているエリア。そのうちルクア大阪店は、物販と飲食を融合した新しいフォーマットで、オープン後の業績は計画を大きく超え、好調に推移。このように今後、新規出店については当社が得意とするエリアに力を入れていきます。現在、大阪市福島や兵庫県川西市、また神戸市三宮エリアなどへの出店に向け、準備を進めています。
──既存店はいかに活性化しますか。
並松 従来、売場面積の規模で管理しましたが、今後は売上高の規模別に分類し、それぞれに合った施策を打ちます。具体的には、年商16億円以上の「標準」、12~16億円の「小型」、12億円未満の「新型」の3つ。その上で、店長の判断を取り入れ、商圏に応じたきめ細かな品揃え、店づくりを行っていきたい。
たとえば都心部にある小型店では、総菜はじめ即食商品を充実させるなど、CVSのような品揃えをするのも一つの選択肢になります。シニアマーケット対応の、売場の広い標準店では、時間消費できるイートインコーナーを設けるなど工夫していきます。
──不採算店についてはいかに対応しますか。
並松 テコ入れし、それでも業績回復が見込めない店舗は順次、整理します。18年3月期には7店を閉め、うち3店はイズミヤのSM業態「デイリーカナート」へ転換しました。このようにエリア特性を見て、支持される企業ブランドへの転換も進めます。
──12億円未満の新型とはどのような店ですか。
並松 新しいオペレーションの手法を取り入れる店舗です。売上規模が小さい店舗で、プロセスセンターを積極的に活用、投入人時を低減して、効率運営により確実に利益を確保できる仕組みを整えます。おもに既存店へのアプローチになりますが、前述の中之島店はこのタイプです。
これらの施策を通じ、前年実績を2%上回る既存店を増やし、そこに経営資源を集中させます。80店のうち30~40店がそういった店になれば、着実に成長できる素地となるはずです。