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食品小売で一人負け 大手3社が進める「新しいコンビニ」ビジネスに迫る!

コンビニ大

客数減で市場縮小!事業を撤退するCVSも

 コンビニエンスストア(CVS)業態が正念場に立たされている。引き金になったのは、新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大だ。食品スーパー(SM)やディスカウントストア、ドラッグストア(DgS)などの食品小売業態が、まとめ買い需要の高まりを受けて業績を大きく伸ばした一方、CVS各社はその特需を受けるどころか業績が落ち込んだ。各社によると、近年、店数を増やしてきた都市部のオフィス街や繁華街、駅ナカなどに立地する店舗の売上が、リモートワークの普及や外出自粛生活によって一気に減少したことが主な要因だという。

 その結果、日本フランチャイズチェーン協会(東京都)が発表した、2020年度(20年1~12月)のCVSの市場規模は10兆6608億円で対前年度比4.5%減。協会がデータを公開している05年以来、初めて前年実績を割り込み、市場縮小に転じた。とくに既存店客数の減少が深刻で同10.4%減となっている。

 CVS市場の9割超を占めるのが、セブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長)、ファミリーマート(東京都/細見研介社長)、ローソン(東京都/竹増貞信社長)の大手3社だ。なかでも業績を落としたのがファミリーマートとローソンだ。21年2月期の既存店売上高は、セブン-イレブンが対前期比97.6%にとどまったのに対し、それぞれ同92.3%、同92.7%。チェーンの“実力値”ともいわれる平均日販はファミリーマートが49万3000円(同3万5000円減)、ローソンが48万6000円(同4万9000円減)と40万円台まで下がり、セブン-イレブンの64万2000円(同1万4000円減)と15万円近くの格差が生まれている。

 こうしたなか経営体力の乏しい中小CVSは大手企業との提携や、事業撤退に動いている。21年4月、京王ストア(東京都/山岸真也社長)は運営する駅売店・CVS全体の7割超に当たる約40店を「セブン-イレブン」のフランチャイズ店に転換すると発表。CVS「コミュニティ・ストア」を展開する国分グローサーズチェーン(東京都/横山敏貴社長)は今後の業績回復が困難だとして21年11月でCVSの全事業から撤退することを発表した。

オフィス街だけでなく生活エリアでも利用減

 なぜCVSの業績は落ち込んだのか。その実態をつかむべく、本特集ではレシートデータによる消費調査・分析を行う2社の協力を得て、CVSの利用動向を調べた。その結果、CVSが置かれている厳しい状況が浮き彫りになった。なかでも、東京都内の4つの立地で利用動向の変化を調査すると、通勤者の多い都心部のオフィス街だけでなく、都心部の生活者の住むエリア、さらには郊外の住宅街でもCVSの利用が減っていることがわかった(56~57ページ参照)。SMやDgSのほか、都市部では小型SMなどに利用を奪われているとみられる。

 コロナ禍での大きな環境変化として、外出自粛によるまとめ買いニーズの高まりや、自宅で食事をする機会の増加などが挙げられる。対してCVSは、これまで人々が「移動」する生活を前提に、忙しい現代人に「利便性」を提供し成長してきた業態だ。そのためコロナ禍で変化した環境下ではむしろ、需要を獲得しづらい存在になってしまったと考えられる。

 コロナ感染拡大前のCVSを振り返ると、店舗間競争の激化や人口減により各社が新規出店スピードを減速させ“CVS飽和論”があらためて浮上したほか、労働力不足を背景に“24時間営業問題”も発生し、今後の成長が危ぶまれている最中だった。そこへ今回のコロナショックが業績を直撃したかたちで、CVSはいよいよ待ったなしで事業の変革を迫られているといえる。

 とはいえ、今後人口減が進む国内で成長し続けることは容易ではない。こうしたなか大手CVS企業では、海外に新たな成長を求める動きが目立ってきた。セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長)は米国の石油精製会社マラソン・ペトロリアム(Marathon Petroleum)が運営するガソリンスタンド併設型CVS「スピードウェイ(Speedway)」を総額2兆円超で買収し、ローソンも21年2月期に初の黒字化を果たした中国での出店スピードをあげて早期に1万店体制をめざす方針を明らかにしている。

大手3社が既存店改革を猛スピードで実行

 一方、国内CVSの成長はこのまま停滞してしまうのだろうか。

 セブン-イレブンの永松文彦社長は「お客さまのニーズをつかむことさえできれば、成長の限界はない」と述べる。CVSはこれまで幾度も飽和市場といわれるなか、銀行ATMの設置や中食の強化など、新たな利用シーンを創出することで成長を遂げてきた。今回のコロナ禍の環境変化にも果敢に挑み、現状を打破する考えだ。

 そうしたなか大手3社が猛スピードで進めているのが既存店改革だ。セブン-イレブンは21年2月期に家飲みニーズを取り込むべく酒類売場を拡大した新たな売場レイアウトを開発し、22年2月期中に約1万2000店への導入を完了させる。従来の画一的なフォーマットからの脱却もめざし、店舗の立地を大きく3パターンに分類し、立地に応じて品揃えを変化させる取り組みもスタートしている。

 ローソンも22年2月期、「新しいCVSモデルの構築」を掲げて全国約500店での改装実験に乗り出している。ここで得られた成果を22年2月期中に5000店規模に波及させたい考えだ。同実験でとくに注力するのが食ニーズの深掘りだ。店内厨房による店内調理品「まちかど厨房」を現在の約6500店から約9000店まで拡大させて、商品開発や宣伝も強化し差別化を図る。

 ファミリーマートも既存店を強化中で、新設した「店舗再生本部」のもと低収益店舗をいったん直営店化して“再生”する取り組みを進めている。

 もう1つ新たな成長を可能にするべく、本格稼働を始めているのが店舗を拠点とした配送サービスだ。セブン-イレブンは17年から実験を重ねてきたサービス「セブン-イレブン ネットコンビニ」の導入店を、22年2月期に現在の約370店から約1000店へと拡大。スマホアプリを活用し、注文商品を半径500m圏内に最短30分で配送する利便性を提供する。ローソンは「ウーバーイーツ(UberEats)」をはじめフードデリバリープラットフォームと提携することで商品の配送サービスを一気に広げている。21年4月時点で28都道府県1500店以上でサービスを展開している。

広範にデジタルを活用新規事業を収益源に

 これまで以上にデジタル活用にも力を注ぐ。近年CVS各社はスマホアプリの活用やレジでのキャッシュレス化などを中心に進めてきた。ファミリーマートで同社のデジタルトランスフォーメーション推進を指揮した現DX JAPAN代表の植野大輔氏は「CVS各社は今こそ決済などの一部にとどまらず、デジタルを広範に生かしフォーマット自体を進化させるとき」と指摘する。

 そうした動きは着実に進みつつある。たとえばセブン-イレブンは自律走行型配送ロボットやドローンを活用した商品の配送実験をスタートさせているほか、ブロックチェーンやAIを活用することで、高度な製造工程管理や商品受注予測を可能にするサプライチェーンシステムも構築中だ。ファミリーマートは無人決済システムの開発を行うTOUCH TO GO(東京都)と提携することで多店舗化可能な無人決済店舗の開発を急ピッチで進めて、マイクロマーケットへのさらなる侵攻を図ろうとしている。

 デジタル活用と並行して進むのがデータを活用した新規ビジネスの開発だ。とくにファミリーマートとローソンは親会社の商社との連携を詰めて事業創出を図る。ファミリーマートは、伊藤忠商事(東京都)のほか大手通信事業会社のNTTドコモ(東京都) 、サイバーエージェント(東京都)と手を組み、購買データを活用したデジタル広告配信事業および広告代理店業の展開をめざす。ローソンもKDDI (東京都)と資本業務提携を締結して会員基盤を拡大し、収集したデータによる新規事業や次世代CVSモデルの開発などを進める。こうして得られる新たな収益源や顧客データを活用するノウハウは、CVSの変革をいっそう進化させることにつながりそうだ。

 このようにCVS各社は本腰を入れて従来の店舗モデル、さらにはビジネスモデルの変革に動いている。
 CVSはすでに全国に店舗網を構築しており、高齢化や過疎化が進む今後の日本において“生活インフラ”のような役割を果たすことが期待されている。コロナ禍で業績が振るわずとも、その存在価値はそう簡単には揺らぐことはないはずだ。

 そんなCVSは今、足元の逆境をバネに、店舗、物流ネットワーク、デジタル活用、親会社や外部企業との連携など、あらゆる経営資源を活用して変革を遂げようとしている。各社が進める「コンビニ作り直し」、その新たなコンビニ像とそれを実現するための具体的な施策に迫った

 

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