食品小売で一人負け 大手3社が進める「新しいコンビニ」ビジネスに迫る!

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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広範にデジタルを活用新規事業を収益源に

 これまで以上にデジタル活用にも力を注ぐ。近年CVS各社はスマホアプリの活用やレジでのキャッシュレス化などを中心に進めてきた。ファミリーマートで同社のデジタルトランスフォーメーション推進を指揮した現DX JAPAN代表の植野大輔氏は「CVS各社は今こそ決済などの一部にとどまらず、デジタルを広範に生かしフォーマット自体を進化させるとき」と指摘する。

 そうした動きは着実に進みつつある。たとえばセブン-イレブンは自律走行型配送ロボットやドローンを活用した商品の配送実験をスタートさせているほか、ブロックチェーンやAIを活用することで、高度な製造工程管理や商品受注予測を可能にするサプライチェーンシステムも構築中だ。ファミリーマートは無人決済システムの開発を行うTOUCH TO GO(東京都)と提携することで多店舗化可能な無人決済店舗の開発を急ピッチで進めて、マイクロマーケットへのさらなる侵攻を図ろうとしている。

 デジタル活用と並行して進むのがデータを活用した新規ビジネスの開発だ。とくにファミリーマートとローソンは親会社の商社との連携を詰めて事業創出を図る。ファミリーマートは、伊藤忠商事(東京都)のほか大手通信事業会社のNTTドコモ(東京都) 、サイバーエージェント(東京都)と手を組み、購買データを活用したデジタル広告配信事業および広告代理店業の展開をめざす。ローソンもKDDI (東京都)と資本業務提携を締結して会員基盤を拡大し、収集したデータによる新規事業や次世代CVSモデルの開発などを進める。こうして得られる新たな収益源や顧客データを活用するノウハウは、CVSの変革をいっそう進化させることにつながりそうだ。

 このようにCVS各社は本腰を入れて従来の店舗モデル、さらにはビジネスモデルの変革に動いている。
 CVSはすでに全国に店舗網を構築しており、高齢化や過疎化が進む今後の日本において“生活インフラ”のような役割を果たすことが期待されている。コロナ禍で業績が振るわずとも、その存在価値はそう簡単には揺らぐことはないはずだ。

 そんなCVSは今、足元の逆境をバネに、店舗、物流ネットワーク、デジタル活用、親会社や外部企業との連携など、あらゆる経営資源を活用して変革を遂げようとしている。各社が進める「コンビニ作り直し」、その新たなコンビニ像とそれを実現するための具体的な施策に迫った

 

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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