オススメの一冊 「アフターコロナのマーケティング 混迷の時代を切り開く、新しい消費の動き」
『アフターコロナのマーケティング 混迷の時代を切り開く、新しい消費の動き』
森泰一郎=著(翔泳社刊/1760円〈税込〉)
新型コロナウイルスの感染拡大により、われわれを取り巻く環境は大きく変化している。それはマーケティングにおいても例外ではなく、コロナ禍では商品開発やPR、広告運用などさまざまな観点から従来の施策を見直す必要が出てきた。本書は、巣ごもり需要の拡大やECの利用率増加、SDGsやエシカル消費のような消費者意識の変化など、コロナ禍で事業環境が大きく変化するなかでマーケティング戦略をどのように立案・実践すればよいかを提示するビジネス書である。
本書は第1~4章で構成される第1部「アフターコロナのマーケティング戦略策定」と第5~8章で構成される第2部「アフターコロナのマーケティング戦略実行」の2部構成となっている。各章ではマーケティング戦略を組み立てるうえで考慮すべき経営環境がアフターコロナでどのように変わるのか、それを踏まえた現在のマーケティングの潮流、マーケティング戦略の立案・実行における重要ポイントなどを多くの事例を交えながら解説している。
ブランドマネジメントについて書かれている第5章では、ブランドが「浸透期」「拡張期」「成熟期」「衰退期」の4つのフェーズのどの位置にあるのかを見極め、戦略を構築する「ブランドライフサイクルマネジメント」について述べられている。たとえば、ブランド力が下がる衰退期では、パッケージなどを変更してリブランディングを図るよりも、高級食パンやお一人様向け焼肉店などを例に挙げ、新たな機能や技術の追加、新規カテゴリーの開拓などによって製品価値を向上させることでブランド力も高める「脱成熟化」をめざしたほうが成功する可能性が高いと著者は主張している。そのほか第5章では、ブランドマネージャーの役割や、弱いブランドの見直し方、万人受けするブランドの共通点など、ブランドマネジメントにおける重要なポイントがさまざまな観点から紹介されている。
第8章では、マーケティング的な視点を全社に普及させることの重要性を説いている。本書はマーケティング担当者だけでなく、営業や人事担当者など、商品やブランドに携わるすべての人へ多くの気づきを与えてくれるだろう。
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