アクティビストと良好な関係構築へ 「目線は同じ」=綱川東芝社長
[東京 14日 ロイター] – 東芝の社長に復帰した綱川智氏は14日のオンライン会見で、アクティビスト(物言う株主)とコミュニケーションを通じて良好な関係を作っていきたいと述べた。同社はコーポレートガバナンス(企業統治)や資本政策を巡って、大株主のアクティビストと意見が対立している。
綱川氏は「中長期的な株主価値を上げることでは経営陣も株主も同じ目線」と指摘。具体的な資本配分や株主還元も「コミュニケーションを取りながら決めるだけでなく実行することで信頼を回復したい」とした。
綱川氏は、前任の車谷暢昭氏が辞任を申し出たことを受け、同日付で社長に就任した。会見に同席した永山治指名委員会委員長は綱川氏について「株主をはじめステークホルダーの信頼も厚く、社長として困難を乗り切った経験があり後任として最適と判断した」と述べた。
綱川氏は16年に社長に就任し、米原子力事業での親会社保証の処理やメモリー事業への外部資本の導入、債務超過回避の目的での第三者割当増資による資金調達など「極めて困難な局面で経営の舵取りを担い、経営課題を一つ一つ前進させてきた」(永山氏)。昨年4月に取締役会長に就任して執行役から退いたが、7日に執行役に復帰し、株主対応にあたっていた。
足元の局面は、事業計画の遂行や英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズからの初期の買収提案への対応、定時株主総会など「重要な経営の舵取りが必要」(永山氏)としている。
東芝は米原発子会社が巨額損失を計上し、経営危機に陥ったことから、17年に綱川社長体制下で6000億円の第三者割当増資を実施。その際、もの言う株主であるアクティビストの保有比率が高まった。足元では、コーポレートガバナンスや資本政策を巡って、アクティビストと意見の対立が深まっている。
綱川氏は、これまでの関係では「株主と話すと、同じ目線で経営してほしいと言われる」と説明。筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントがガバナンスやコンプライアンスを強調しているとし「反省することもあると思う。耳を傾けて反省し改善していきたい。社風も変えていきたい」とした。
中期経営計画の基本的な方向性は変わらないとしたが、市場環境の変化やコロナ禍、米中摩擦などを踏まえ「見直すところは適時見直し、結果はプランができ次第報告したい」という。
キオクシア株の売却方針には変更なく「現金が入ってきたら株主還元する方針は変わらない」と述べた。ただ、前期末の貸借対照表を踏まえて「適正資本の水準などのレベル感をもう一回討議したい」と付け加えた。
永山氏は、ビジネス環境の変化を踏まえてマネジメントの新陳代謝の重要性を指摘し「新たな体制への早期移行も同時に進める必要がある」と述べた。綱川社長も「ミッションを早期に果たし、次の世代に引き継ぐ」との意向を述べた。
前任の車谷氏からは、今年1月の東証1部復帰によって、再生に向けた使命が完了したとして14日に辞任の申し出があり、受理したと説明した。車谷氏は会見に同席しなかったが「東証1部復帰でミッションがすべて完了し達成感を感じている。家族とも相談し、激務から離れて心身ともに充電したい」とのコメントを寄せた。
綱川社長は車谷氏について「就任から3年で1部復帰を果たし、基礎収益力の強化を実現した。成果を上げたことに敬意を表する」と述べた。
永山氏は、CVCからの初期提案について「(初期提案当時の)マネジメント維持と書いてあるが、車谷氏の辞任を受けて(CVCが提案の方針を)どう判断するかはわからない」と述べるにとどめた。
CVC日本法人の最高顧問を務める藤森義明社外取締役については「今後、仮にCVC提案を検討することになると、直接参加できない」との認識を示した。