元ファストリ社員が北九州のうどんチェーンを「人材育成企業」に変えるまでの道筋
「幸せを一杯に。」 新たな経営理念を策定
佐藤社長が資さんのトップに着任して、いの一番に取り組んだのは、経営理念の策定だ。
同氏はこう説明する。「私が着任したときには、(創業者の)大西が亡くなってすでに3年弱が経っていた。大西がいたときは大西自身が経営理念であり創業の精神だった。大西がどんな言葉を発するか、どう行動するかを従業員全員が注目し、聞いたこと・感じたことを実行に移せば大丈夫だった。加えて、しばらくは北九州という限られたエリアで店舗展開していたので、全従業員が同じ空気感を共有できていた」
しかしながら、佐藤社長は経営幹部や店長たちと話をする中で、大西氏が逝去し、徐々に出店エリアも広がっていくなかで、創業の精神が薄まりつつあり、これから歯車がかみ合わなってしまうのではないかとの懸念を持つようになった。「会社として大事にしてきたことやめざすべきことへの解釈が人によって違っていたり、そもそも大西を知らない店長や従業員も増えていくなかで、これはまずいと。これから成長していくためにも、資さんの本質は何か、私たちが本当に大事にしてきたことやこれから大切にしていくべきことは何かを言葉にしなければと考えた」という。
とはいえ、佐藤社長自身も大西氏と面識があったわけではない。そのためトップダウンで経営理念を策定し浸透させるのではなく、「これまで大事にしてきたこと、これからめざすことは何かを、部長から店長までさまざまなメンバーと徹底的に話し合った。本音で語り合うため何度も繰り返してひざを突き合わせ、半年以上かけて議論した」(佐藤社長)
そうしてまとめたのが、「幸せを一杯に。」という新たな経営理念だ。「目指すこと」として、「資さんの伝統をさらに進化させ、常に本物の美味しさへの挑戦を続けます。『この街に資さんがあってよかった!』と、すべての地域に元気とぬくもりをお届けします。」を掲げ、さらに「私たちの3つの約束」として、「味と品質にこだわり、全てのお客さまに満足いただける一杯をお届けします。」「気持ちの良い接客と心地よい雰囲気で、いつでもホッと安らげるお店をつくります。」「互いに尊敬し合い、相手を思いやることで、安心して働ける職場をつくります。」を策定。味、サービス、職場環境の向上についてわかりやすい言葉で理想を掲げ、全従業員が共有できるようにした。