生産性向上にスター社員の成果最大化…AOKIが進めるリモート接客に透けるアパレル販売新常態

油浅 健一
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デジタル接客がもたらす企業側への恩恵

 こうしたサービスのデジタル化は、企業側の視点でも多くのメリットがあるという。鈴木氏は「例えば、店舗販売では、お気に入りのスタッフが店舗異動することで、ご来店が遠ざかるケースもある。オンライン接客でリモート対応が可能になれば、この問題は解消される。首都圏中心の『ORIHICA』の場合、店舗のないエリアもあるが、オンライン接客が拡充することで、そうした物理的問題に起因する不便の解消にもなる」と接客のデジタル化によるプラスアルファの側面を明かす。

 さらに各施策はリアル店舗と連動させることを見据えており、販売スタッフのモチベーション向上も見込まれる。とりわけ、スタッフが自身のページを運営するスタッフページは、サイト閲覧者や顧客がフォロワーとなるため、担当社員は成果をダイレクトに実感できる。リアル店舗での実績に加え、スタッフが自身の裁量で顧客との関係を強化できることは仕事のやりがいにもつながり、士気向上に直結する。

 実際、スタッフスナップの運営に携わるスタッフはまだ一部の社員に限られているが、その9割以上が自ら手を挙げているという。同社もこのページは拡充する計画でそれに伴い、運営を司るマーケティング販促部も今後、現場スタッフへ権限を委譲していく方針だ。現状では、評価の公平性の観点から人事制度をさらに煮詰める必要があるものの、全店舗での展開も視野に入れている。

 スター社員の稼働最大化で生産性を向上

AOKI マーケティング販促部 鈴木恭平次長
AOKI ORIHICAマーケティング販促部 鈴木恭平次長

 オンライン化により、生産性の向上にも期待がかかる。鈴木氏が一例としてあげるのは、スター社員の“パフォーマンス最大化”だ。リアル店舗では、優秀な社員でも対応する顧客の数には限度がある。そもそも、来店してもらえなければ、対応ができない。そのボトルネックをオンライン接客で解消するのだ。

 「例えば、スター性を持った社員が所属の店舗だけじゃなく、空き時間をうまく活用し店舗以外のお客さまの対応をすることでフルに稼働できれば生産性は高まることになる。オンライン接客ならそれも可能だ。実現には評価制度の整備が肝になるが、入社したら店長をめざすという従来の昇進モデルに加え、社内インフルエンサーという新たな目標ができる可能性もある」と鈴木氏はデジタル接客が定着した先にある組織変容の可能性にも言及した。

 同社の試算では、こうしたデジタル接客によりもたらされる効果は、直接の売上アップのみならず売上関与面でより大きな貢献が見込まれるという。それだけに今後は、ポストコロナを踏まえつつ、主力のAOKI事業部への展開も見極めながら、ライブコマースの頻度増やスタッフページの拡充を軸に、在庫管理、データ活用などにも踏み込み、オンライン接客を総合的に強化していくという。そのプロセスは自ずと、アパレル販売のニューノーマル時代への対応とシンクロすることになりそうだ。

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