農地バンク活用でコメづくり、めざすは地域活性化と農業改革=イオンアグリ創造 福永庸明 社長
ICTを武器に栽培技術の継承に協力
──イオンアグリ創造の特徴の1つに、富士通(東京都/田中達也社長)とタッグを組んでのICTの活用があります。ベストプラクティスの共有やデータの蓄積による農業の“見える化”に取り組んでいます。
福永 ある農場が「困っています」と言えば、ほかの農場から「こうすればいいよ」と解決策や意見が集まります。
1年に2回、同じ農作物をつくる二期作なら、1軒の農家さんは2回しか作付や収穫を経験できません。しかし私たちは19の農場があるので同じことを計38回経験できます。解決策やカイゼン策も全農場で共有しているので、これまでにはなかった農業を行っていると言えます。過去5年分のデータから、ある程度のノウハウの蓄積ができましたが、もう少しデータを集める必要があります。
また、農業経営の“見える化”も実現したいと考えていて、経営面でもICTを活用しています。現状では、四半期ごとに決算している農業法人は当社だけだと思います。
──農家は個人の経験や勘に頼る部分が大きいと思いますが、イオンアグリ創造の農業はまったく異なりますね。
福永 ICTは私たちの強力な武器です。
当社を含むイオングループ4社は、7月2日に北海道の三笠市さんたちと「北海道三笠メロン食の匠協議会」を設立しました。生産量が減っている「三笠メロン(I.Kメロン)」の栽培技術の継承や販路拡大に取り組むのが目的です。
「三笠メロン」は、ジューシーな果肉やとろけるような食感、豊かな香りを持つ逸品です。しかしながら、栽培に手間がかかり、品質管理も難しいメロンです。栽培技術の継承では、地域の3人の農家さんから栽培方法を教えてもらい、初年度にマニュアルをつくります。たとえば、メロンのつるの太さの目安はどれくらいなのかと農家さんに聞くと、みなさん親指を示して「これくらいの太さ」と言います。3人の農家さんが親指で示す太さは異なりますから、当社の担当者がメジャーで測り、1.2cm、1.5cmなどと記録します。その中で最もよい状態に育ったメロンのつるの太さをマニュアルに記載するといった具合です。
そのマニュアル通りに栽培すれば、7割くらいの人が「三笠メロン」をつくれると思います。私たちはそのマニュアルを三笠市さんに寄贈したいと考えています。このような取り組みが地域の活性化と日本の農業の改革につながっていくと確信しています。
当社の経営理念は「農業の発展とお客さまの価値を創造する」です。希少な農作物の栽培方法を当社だけで抱え込んでも意味がありません。
──世界で最も普及している農場運営の認証「GLOBAL G.A.P.(グローバルギャップ)」を生産者に広めることにも取り組んでいます。
福永 これも、日本の農業を発展させたいからです。
現在、訪日外国人観光客が大きく増えています。2020年には東京オリンピックもありますから、多くの方が日本に来ることになるでしょう。そのときに日本のおいしい野菜や果物を食べてもらいたいのです。しかし、海外からは日本の農作物は安全性が担保されていないとみられているのが現状です。ですが「GLOBAL G.A.P.」を取得していれば安全性をうたう根拠になるはずです。私たちは自らの知見をもとにした「GLOBAL G.A.P.」の認証取得のためのマニュアルをつくり、農場周辺の農家さんに提供していきたいと考えています。