卸売業から価値創造卸への脱却図る、低温物流でダントツめざす=日本アクセス 田中 茂治 社長
逆風吹き荒れる環境のなか、食品卸各社の改革が始まった。何をめざし、どのように変わるか。改革の成否が企業の存続を左右する──食品卸各社はそのような改革競争のただなかにある。食品卸業界第2位で、低温カテゴリーに強みを持つ日本アクセス(東京都/田中茂治社長)は、同社にしか提供できない価値の創造をめざす。
「卸売業」はモノを売る物販業
──大手食品卸の2013年度決算は、多くが減益でした。この事実からも、業界を取り巻く経営環境は一層厳しさを増しているように感じます。
田中 当社の14年3月期(13年度)の連結売上高は1兆7140億円と、対前期比5.7%の増収でしたが、経常利益は189億円で同3.2%の減益となりました。
ご指摘のとおり、消費税増税、円安基調、そして物流費の高騰など、どれをとっても、われわれを取り巻く経営環境には明るい材料はありません。
食品卸売業は、大きな転換期に入ったと実感しています。ですから、当社はそれを見越して数年前から改革を推進しています。これは、社内の風土や価値観をも変える大改革です。今、変わらなければ、明日はありません。社員一人ひとりが危機意識を持ち、自分たちの力で会社を変えるという意志で臨まないと、この改革は成功しません。
──13年度からの「第5次中期経営計画」に、新ビジョン「日本アクセスは3つの市場分野におけるACCESS VALUE実現を通じて『卸売』の枠を超えた『卸』企業を目指します」を掲げています。具体的には、どのような企業に生まれ変わることで、現状を打破し成長に転じようとしているのですか。
田中 フィリップ・コトラー教授が著書『コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』の中で説いているとおり、製造者主導の時代から消費者主導の時代に移り、さらに価値主導の時代になりました。これを流通に照らしてみると、製造者主導の時代の覇者だった「問屋」は、消費者主導の時代に衰退していき、「卸売業」が生き残りました。このように、時代に適合しなければ市場から退場を余儀なくされてしまうのです。
一般的に、「卸売業」はモノを売る物販業です。しかし、価値主導の時代となった今、従来どおりの物販業のままでは生き残れません。価値を創造し、お客さまに提供できる「価値創造卸」へ転換しなければ生き残れないのです。それがビジョンに掲げた「『卸売』の枠を超えた『卸』企業」の意味するところです。簡単な言い方をすれば、物販業を卒業し、流通サービス業になろうとしているのです。