全体最適を進め、競争優位性を確立して「攻めの商売」に転じる=マルエツ 上田 真 社長
“パワーアイテム”の売価を競合店に合わせる
──競争優位性を確立するうえで「価格」は大きな要素になります。前期までは価格政策を「4勝3敗3分け」と表現していました。
上田 私は明確に「○勝○敗」というような数値は決めていません。
各店舗は競合店と局地戦をしているわけですから、商圏内のお客さまに「マルエツは高い」と思われてしまったら、ご来店いただけなくなります。ですから、購買頻度の高い牛乳やヨーグルト、食パンなどの“パワーアイテム”は、競合店の価格を意識して売価を設定します。これはあくまで個店対応になります。
もうひとつ、大事なのは青果です。青果は集客の要となる重要な商品ですから、より低価格で販売し、集客につなげるべく取り組んでいます。
仕入れは、東京都の大田市場に全面依存するのではなく、分散させています。7~8つの青果卸売市場にマーチャンダイザーを常駐させ、品質が確かで安く仕入れることができる青果を調達する体制を敷いています。
店舗では、「鮮度」と「価格」を訴求できる商品を機動的に売り込める売場をつくるようにしています。青果は販売数量がとても多いですから、課題は投入人時をいかに減らしていくのかにあります。
「Tカード」は大きな武器
──2つめのアウトスタンディングバリュー(突出した価値)商品の開発は、どのように進めますか。
上田 当社は、PBの「maruetsu365」をはじめ、メーカーさんの“留型商品”、それから自社仕様の唐揚げやトンカツなどのデリカ、そして自社基準をクリアした生鮮食品などを「オリジナル商品」と位置づけています。13年2月期の実績では、それらの売上高構成比は9.8%になります。
PB「maruetsu365」や留型商品は、社内に13~15人で構成される商品開発委員会があり、そこで承認を得た商品だけが実際に販売されることになります。たとえば、現在開発を進めているパウチパック入りの総菜は、これまで8回ほど試食を行いましたが、商品化には至っておらず、合格基準は非常に高いものになっています。換言すれば、すでに販売しているPB「maruetsu365」や留型商品は「突出した価値」があるということです。
なお、イオン(千葉県/岡田元也社長)さんのPB「トップバリュ」については、基本的には当社にとってメリットがある商品を取り扱うというスタンスです。当社が独自に開発できない、または開発に長時間を要する商品、そしてチルド・冷凍総菜の「トップバリュ レディーミール」などの優れた商品は、積極的に導入していきたいと考えています。
新商品の開発では、ナショナルブランドメーカーさんの商品の売れ行きやトレンド、量目などを見て企画を練っています。社内に本格的なマーケティング・リサーチの機能はありませんから、今後、市場にないまったくの新しい商品を開発できるかどうかがカギになります。
──マーケティング・リサーチという点では、13年2月に全店導入が完了した、Tポイント・ジャパン(東京都/増田宗昭社長)の発行する「Tカード」のデータを商品開発に生かすことは考えていますか。
上田 2月に導入したところですから、まだデータ活用は緒についたばかりです。
これまでは、POSデータから単純な売れ筋商品を知ることはできましたが、お客さま個人とひも付けされているID-POSではありませんでした。しかし「Tカード」が全店に導入されたことによって、お客さま一人ひとりに対するワン・トゥ・ワンマーケティングが理論上は可能になります。商品開発や品揃え、販売促進面でも大きな武器になると考えています。
カードを活用した販売促進としては、単純な「ポイント〇倍セール」のようなことはできるだけ控え、当社の店舗にご来店いただいていない「Tカード」をお持ちのお客さまにご来店いただけるような施策を今後五月雨式に実施していく計画です。
そして4つめの中国事業の推進では、中国最大手の家電量販店である蘇寧運商集団(前:蘇寧電器)とタッグを組み、13年9月に江蘇省無錫市へ1号店を出店する予定です。また、同じく蘇寧運商集団が開発中の商業施設内に、2号店、3号店を出店することがすでに決まっています。