イオンベーカリーも導入したフードロス削減サービス「TABETE」の次なる戦略
フードシェアリングサービス「TABETE」を軸にフードロス削減に関する事業を展開するコークッキング(東京都/川越一磨代表取締役CEO)。前編では、「TABETE」の仕組みや利用動向などを解説した。後編となる本記事では、コロナ禍での状況や今後の事業拡大の戦略について説明する。
購入されるには「出品理由」の明記が必須
「TABETE」では、出品した商品を購入してもらうことを「レスキュー」と呼んでおり、月間で約6000食がレスキューされている。
「TABETE」の特徴として注目したいのは、出品する際には必ず理由を書かなければならない点である。単に「余ったので」「在庫」など、説明が短かったり雑だったりする商品はレスキュー率が低いとのことだ。なぜ余ってしまったのか、ユーザーが納得できる理由を明確に記入している商品が比較的売れやすい傾向にある。そのほか、ユーザーが帰宅時に購入しやすい夕方以降に出品された商品や、割引率が3割前後の商品も売れやすい。
コロナ禍で月間出品数が約3倍に
コロナ禍では、月間の平均出品数がコロナ前の約3倍となり、同様にレスキュー数も大幅に増えているという。ユーザー数も20年4月から21年1月までの10カ月間で約11万人増えた。
ユーザー増加の要因としては、コロナ禍で苦境に立たされている店舗を助けたいという「応援消費」の意識が強まっていることが挙げられる。「これまでもロスで困っている店舗はもちろんあったが、コロナ禍ではテレビなどのメディアでそのような店舗を目にする機会が増えた。そこで初めて困っている店舗を助けたいと感じた人も多いのではないか」(コークッキング取締役COO 篠田沙織氏)
店舗側の変化としては、コロナ禍で需要が読みづらくなりフードロスが発生しやすくなった。また、廃棄を恐れて生産量を減らしたことで、全体の売上が下がるといったことも起こるようになった。このような状況下、生産量を手探りで調整していくなか、「TABETE」への出品が増えているようだ。
また、コロナ禍で飲食店がテイクアウトを始めたり、中食に完全に業態転換する店舗が増えたりしたことで、登録店舗数も伸長している。テイクアウト導入、業態転換直後は生産量の調整がうまくいかないため、ロスが出やすいことも出品数増加の一因となっている。20年4~5月の1度目の緊急事態宣言下では飲食店からの問い合わせが殺到し、月間で100店舗以上の申し込みがあった。