コロナで宅配絶好調の生協が抱えるジレンマ 生協が進める“聖域”なき改革とは?
新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大の影響で宅配、店舗事業ともに業績が大きく伸長している生協。一方で、宅配ニーズの高まりにより、同業の生鮮宅配やネットスーパーも急成長中で、競争が激化している。こうしたなか生協はどのような成長戦略を描いているのか。全国の生協の連合会である日本生活協同組合連合会(東京都/本田英一代表理事会長:以下、日本生協連)の嶋田裕之代表理事専務に聞いた。
過去に例を見ない全国的な供給高増
──日本生協連に加盟する65の主要地域生協の供給高(小売企業の商品売上高に相当)を見ると、まず宅配事業については2020年度4~8月までの累計で対前年同期比118.6%。感染症拡大に伴い大きく伸長しています。
嶋田 政府から学校一斉休校の要請があった2月末頃から利用者が急増しています。しばらく休止していた組合員が利用を再開しているほか、新規加入者も増えています。
とくに利用が集中した5月は、受注が同約140%に拡大し、供給高は同123.2%を記録しました。コロナ禍で特売を中止したことで粗利益高も上がっており、物流費など、コストの一部が上昇しているものの、経常剰余金(同経常利益に相当)を十分に確保できています。これまでも、自然災害などの影響により、供給高が一部の地域で一時的に増えることはありましたが、長期にわたって全国的に伸長し続ける状況は、過去に例がありません。
──コロナ禍で宅配事業の利用動向にはどのような変化がみられますか。
嶋田 コロナ禍での外出自粛により、生活必需品を定期的に自宅で受け取れる宅配サービスへの需要が高まっています。従来、宅配事業の利用者は50代以上が中心でしたが、コロナ禍をきっかけに、これまで生協との接点が比較的少なかった20代~30代の若い世代も利用を始めています。
とくに、在宅勤務の普及や外食控えによって内食の頻度が高まっていることから、食品の供給高が増えています。なかでも、パスタをはじめとする常温加工食品や冷凍食品など、長期保存が可能で簡便性の高い商品の受注は以前の2~3倍に拡大しています。生鮮食品では、消費期限が短い鮮魚よりも、野菜や精肉の受注が増える傾向にあります。
欠品や加入受付中止浮き彫りになった課題
──宅配事業の急激な利用増に対し、問題は生じていないのでしょうか。
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