続・VUCA時代の小売と消費のカタチ 第2回:「消費の現場」を応援するソーシャルアクションに学ぶ、消費の現場における対話の3つのカタチ
3:消費の現場で働く一人一人が内省し内発的動機を「見つめる」こと
消費の現場の課題をリサーチと議論を重ねていく中で、先が見えないコロナ禍では心理的な不安が大きく増加していることに気づいた。小売や飲食で働く人々は、接客のために日々自身の命の危険を晒しながらも「消費の現場」でサービスを提供している。こうした人々は、自分自身と家族の命のリスクを背負いながらも真摯に仕事に向き合っている。しかし日本では「お客様は神様」思考が強く、感謝されるどころか、苦情を浴びる対象になっていたりする。実はこの点に関しては以前の連載で書いた通り、オランダの場合は顧客と店員は対等な立場とみなされるため、このような構造は起きにくい。つまり日本は海外以上に、消費の現場で心を病みやすい構造にあるのだ。そこで今回多くの優秀なコーチを抱えるZaPASSとコラボし、有志のコーチ達によりコロナ禍で一歩踏み出したい方へ無償のコーチングを提供するTMJP_Coachingというアクションを行った。 プロコーチの岡田裕介氏は「自分の意識や行動にブレーキをかけているサボタージュ(破壊工作)と向きあおう」という言葉をもらった。さらにコーチング.comの代表の垂水 隆幸氏からは「自分と相手の性格のクセを把握することで自分自身の社会での活かし方が見えてくる。」というメッセージを頂いた。
4:異業種へ越境し、共にイノベーションを起こす仲間を「見つける」こと
こうして内面を見つめた先に新しいチャレンジを起こしたいと思った時、次にやることは仲間探しである。なぜなら、複雑化した時代に、自分一人ではできることに限界がある。新しいイノベーションを起こすためには多様なスキルを持った仲間との出会いが必要だ。そこでマッチングプラットフォームを推進するCoFINDとコラボレーションし、TMJP_Findの取り組みを行った。ワークショップを通じスキルの違うメンバー同士のマッチングを行う取り組みであった。このプロジェクトの代表の井上 翔宇からは「まず夢を語ろう。そこから想いに共感する仲間は集まる」ということを自分自身の経験を踏まえて語ってくれた。
また「渋谷をつなげる30人」などの産学連携プロジェクトを手がけるPRプランナー日比谷 尚武氏とフェズの中澤 泰史氏の対談では「異分野がつながるコミュニティを大切にすること。普段から異なる業界・業種の仲間とじっくり絆を育んでおくことが、有事に何か新しい行動を起こす際に大きな力となる」と教わった。また エンジニアとデザイナーとコピーライターが連携した#SOSMAPJAPANチームからは「それぞれの得意にフォーカスし、チームでリスペクトしあうこと」の大切さを語ってくれた。さらにベストセラー『ティール組織』をプロデュースした嘉村 賢州氏は、これからの消費の現場における組織のあり方としては「現場が考え動くセルフマネジメント型組織」が現代で求められていると語った。コロナ禍には、トップダウン型の硬直した組織よりも、現場が自身の判断でしなやかに動く生命体的な組織へとシフトしていくべきなのだ。またイノベーター・ジャパン代表取締役の渡辺 順也氏と電通の小川 滋氏の対談では「これからは職場や地域の仲間とともに、子育てや家事をシェアしていく『働く』と『育てる』が両立する未来」こそが大事であると具体的な事例を通じて語ってくれた。
このように異分野から学び、自分たちの内面を見つめ、繋がるべき相手と繋がること。これはコロナ禍を経て、より重要になってきているファクターではないだろうか。どうしても小売業界は普段、近い商圏のライバル店舗や小売業界の中だけに視点がむきがちである。こうした日本の世界の危機的状況こそ、異分野の知恵についても目を広げていくことは十分に有益なことだと考えられる。小売業界よ、小売業界を出てよのなかと広く繋がろう
前回:「消費の現場」を応援するソーシャルアクションに学ぶ、消費者行動の変化とビジョンの重要性
次回:「消費の現場」を応援するソーシャルアクションに学ぶ、願う未来と可能性のカタチ。
堤 藤成
株式会社フェズ クリエイティブ・ディレクター/PR/コーチ
新卒で電通に入社し、コピーライター、デジタルプランナーとして、様々な小売・メーカーの店頭プロモーションやブランディング、人工知能コピーライタープロジェクトなどの新規事業等を担当。その後マレーシアのELM Graduate Schoolにて、MBA(経営学修士)取得。現在は『「消費」そして「地域」を元気にする。』をミッションに小売業界のデジタル革新を担う株式会社フェズに転職し、クリエイティブ・ディレクションと広報に従事。オランダ在住のリモートワーカーとして、EU圏からアジア圏まで、海外リテイルのトレンドについてもリサーチを進めている。