常盤勝美の実践ウェザーMD #2 流通小売業における気象情報の活用例
経験のない異常気象にどう対応するか
気象情報あるいはウェザーMDを取り巻く環境は、時代とともに変化しています。気象庁あるいは民間気象会社で作られる予報コンテンツは、種類が増え、解像度は一層細かく、また精度も少しずつ着実に向上しています。
防災的観点だけでなく、経済的な観点からも国民の様々なニーズに対応できる情報に進化しています。参考までに、気象庁の報道資料の中から、2020年1月1日から9月15日までの間に気象庁で運用が始まった(あるいは内容が拡充した)情報を図表②にまとめました。
運用開始日 |
情報内容 |
1月29日 |
過去・現在・将来の黄砂の分布を連続的かつ面的に示した「黄砂解析予測図」 |
3月5日 |
東京レーダーの(雨の強さや雨雲の動きを従来よりも正確に捉えられる二重偏波気象レーダーへの)高機能化 |
3月18日 |
分布予報(天気、気温、降水量、降雪量)の高解像度化【20km四方単位→5km四方単位】と予報期間の延長 |
7月1日 |
関東甲信地方における熱中症警戒アラート(試行) |
9月9日 |
24時間以内に台風に発達する見込みの熱帯低気圧の、5日先までの進路予報 |
情報活用技術に関してもAI技術によって、気象要素と販売指標との関係性が評価できるようになっていて、自動発注にも応用されつつあります。
しかしながら、近年の気候変動や生活環境の変化によって、これまでの実績データに基づく関係性が必ずしも通用しなくなってきています。近年の台風被害や大雨被害など、これまでに経験のないような状況が起こっており、これからも頻発することが予想される異常気象にどう立ち向かっていくかも、重要な観点の1つです。
そのとき、どのように気象情報を活用していけば良いか、これまでの実績の蓄積の中から、単に定量的な関係性を押さえるだけでなく、お客様が消費するまでのプロセスの中でその結果が示唆する意味合いを把握することが重要であると考えます。そして気温や雨の予報だけなく、さまざまな予報プロダクトにそのメカニズムを連携させることで、たとえ過去にあまり例をみない状況であってもより適切なMDに近づけられることでしょう。
ポイントは、人々の関心事、興味、流行などは時代とともに変化しますが、消費ニーズに直結する、天気と人間生理の関係の基礎となる部分は時代とともにそう大きな変化は起こらず、スタンダードに使えるという点です。次回は、私が携わってきた中でのウェザーMD実践の成功事例や失敗事例を紹介し、これからの時代に、より適切にウェザーMDを実践するためのポイントをまとめます。
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