伊藤忠がTOBでファミマの完全子会社化目指す、JAグループとの資本提携も
伊藤忠商事は7月8日、子会社のファミリーマートに対してTOB(株式公開買い付け)を実施し、同社の完全子会社化を目指すと発表した。伊藤忠とファミマが一体となって迅速に意思決定を進めていくために、ファミマの株式を非公開化するのが目的。
ファミマは2016年9月にサークルKサンクスを吸収合併したことで、事業規模ではコンビニエンスストア業界2位となったが、成長性や収益性の向上に関しては目立った成果が上がっていない。伊藤忠はグループの総合力を生かして、ファミマの事業基盤を強化する。具体的には、物流コストの削減やグループ共通でのデータ活用などに取り組む。また、ファミマが持つ約1万6500店舗のネットワークや1日当たり約1500万人が来店する消費者との接点を生かした新たなデジタル関連事業の創出を進める。
伊藤忠は現在、グループとしてファミマ株式の50.1%を保有しているが、7月9日から8月24日まで1株当たり2300円でファミマの株式を買い付ける。買い付け価格は7月7日の終値に対して、20.55%上乗せした。買い付け予定数の下限は約5011万株で、保有割合は60.0%となる。買い付け予定数の上限は設けておらず、ファミマの全株式を買い付けた場合の取得額は約5800億円となる。
TOB実施後は、全国農業協同組合連合会(JA全農)と農林中央金庫にファミマ株式の4.9%を売却し、戦略パートナーとして関係を強化する。商品調達や地域活性化、海外展開などで連携を図る計画だ。
伊藤忠は1998年2月に西友から株式を取得して、ファミマを持分法適用会社化、2018年8月にはTOBにより連結子会社化した。一方、ファミマは16年9月にユニーグループ・ホールディングスと経営統合した後、19年1月にはドンキホーテホールディングス(現パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)にユニーの全株式を売却し、コンビニ事業に経営資源を集中した。
なお、ファミマは7月8日、21年2月期の連結業績予想を下方修正した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、20年3〜5月期の業績が低迷したことが要因。オフィス立地や観光立地の店舗を中心に売り上げが落ち込んだ。21年2月期の営業収益は前期比11.0%減の4600億円、事業利益は11.7%減の570億円を見込む。4月に発表した従来予想に比べて、それぞれ590億円、280億円の下方修正となり、増収増益予想から一転、減収減益となる見通しだ。