ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営2〜揺らぐビジネスモデル、「テナント売上依存」の限界〜
人口問題とショッピングセンターのビジネスモデル
なぜ、私がここまで人口問題にこだわるのかといえば、ショッピングセンターのビジネスモデルに大きく影響するからだ。では、そのショッピングセンターのビジネスモデルとは一体どのようなものだろうか。
ショッピングセンターは不動産賃貸業に分類される。ショッピングセンター内の賃貸借物をテナントに賃貸し、賃料を収受するビジネスである。
一般的に不動産賃貸業における賃料は、立地、周辺相場、スペック、階数、需給バランスで決まる。ところがショッピングセンターの賃料はそういった決定要因以上に出店するテナントの売上高に依存する。なぜならショッピングセンターの賃料にはテナントの売上高に連動する売上歩合制賃料が採用されるからである。
売上高の10%を賃料と決めればテナントの売上高が月額1,000万円の時、賃料は100万円となり賃貸面積が50坪であれば月額2万円/坪と計算される。
市街化の進んでいない場所や駅から遠く離れ賃料の周辺相場が無い農地の中にでもテナントの売上高さえ予想出来れば賃料設定が可能となり、その賃料収入額に応じた投資実行を可能とする。
これまで工業団地として開発され、長年買い手が付かず放置されてきた土地がショッピングセンターとして開発される現象もこのテナント売上高に連動したビジネスモデルがあるからに他ならない。
オフィスや住宅や百貨店などの開発ができない場所であってもショッピングセンターであれば開発を可能とする画期的なビジネスモデルとしてこの50年機能してきたのである。
ショッピングセンタービジネスモデルの限界と今後
ところが人口減少と人口構造の変化によって、このビジネスモデルにほころびが出始めたのである。ショッピングセンターの賃料収入はテナントの売上高に依存するため、不動産賃貸業であるビジネスにも関わらず、ショッピングセンター事業者がテナント売上高にこだわる理由がここにある。
しかし、テナント売上は買い物や食事をする消費者がいないことには始まらない。これがショッピングセンターのビジネスモデルに対して人口減少と人口構造の変化が大きく影響する理由である。
今、日本は新型コロナウイルスへの対応で四苦八苦の状態だが、少し顔を上げて将来を見ればそれ以上に危機が迫っていることが自明である。
今は「リベンジ消費」により、若干の好調さを保っているものの人口減少と消費市場の減少(特に若年層の減少)は、経済活動だけでなく、年金や医療費などの社会保障や税収の低下による社会資本の整備にまで大きく影響し、今般の新型コロナウィルスによる休業補償や税収の低下による増税は避けられず、将来的にはショッピングセンターをはじめ、商業施設の売上高は低下するだろう。
では、このような環境下において、ショッピングセンタービジネスはどのような道を歩んでいくのか、はたまた歩むべきなのか、次回、明らかにしていくこととする。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。
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