ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営3〜これからのショッピングセンタービジネスモデル〜

2020/07/22 05:55
    西山貴仁(株式会社SC&パートナーズ 代表取締役)
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    これまで2回にわたって、国内ショッピングセンターを取り巻く厳しい状況を踏まえ、テナント売上に依存するショッピングセンタービジネスの限界について述べてきた。第3回となる今回は、解決編として「これからのショッピングセンターのビジネスモデル」について解説したいと思う。

    Vera_Petrunina / istock
    Vera_Petrunina / istock

    限界を迎えるショッピングセンターのビジネスモデル

     前回、ショッピングセンターのビジネスモデルとは、不動産の価値とテナント売上高の乗数によって成り立つビジネスと解説した。

     ショッピングセンター事業は、周辺の賃料相場や取引事例が無くともテナントの売上高が予測できればその一定額を賃料と言う名目で収受することによって成立し、そのリターンを裏付けに資金調達と投資実行を可能とする画期的なものであった。

     しかし、今は、人口が減り、ECが伸長し、温暖化による自然災害が多発する時代にあってはテナント売上を前提にしたビジネスモデルは危機に瀕している。

     それでもショッピングセンターがこれまで継続できたのは、「最低保証付き売上歩合制」というリスクヘッジされた固定賃料があったためだ。それにより、小売業である百貨店ほど売上減少の影響を大きく受けることもなかったのだが、今般のコロナ禍によって店舗が休業し、固定賃料さえ収受することが難しくなり、その脆弱さが露呈したのだ。

     ショッピングセンターモデルは、人口増加、経済成長、中産階級の増加、大量生産・大量消費の背景があって初めて成立する仕組みであることは紛れもない。

     しかし、ショッピングセンター事業者も人口の減少を座して見ているわけではなく、テナントの種類や時間消費機能を強化し、それなりに工夫と努力を行ってきた。

     不動産も単に活用するだけでなく、流動化手法を取り入れながら資金化と再投資を繰り返すビジネスモデルを2000年以降は進めてきている。

     しかし、その努力もむなしく2019年の出生数は90万人を割り込み、消費市場が大きく減退し、2008年のスマホの登場によってECが大きく伸び、その座を浸食されているのである。

     では、この環境の中になってこれまで「最強の流通業態」と言われたショッピングセンターのビジネスモデルは終焉を迎えるのだろうか。

    ショッピングセンターは本当に変化対応業か

     終焉−−。非常にネガティブな言葉だが、逆を返せばこれまでのものが終わり、新たな萌芽を予感させる言葉でもある。

     これまで「ショッピングセンターは変化対応業」と言われてきた。しかし、この変化対応業の意味は、人気のテナントや目新しいテナントを誘致し、ショッピングセンターで扱う商品やサービスを時流に合わせてスイッチさせるだけの変化対応を指している。つまり、時代と共に消費者が希求するものが変われば、それに対応したものをいち早く取り揃えることを変化対応と言ってきたのである。

     そこでは不動産賃貸業という基本的スキームは変わらず、「不動産×テナント売上」という図式もそのままに、単にリニューアルと呼ばれるテナント入れ替えに終始してきたのだ。これまでは、それで十分継続的な経営が可能であったのである。

     ショッピングセンターでいうリニューアルは改装であったりテナントの刷新であったり、その程度のことを指す。一般的に考えるリニューアルとは程遠い「リフレッシュ」のレベルであり、これが問題を先送りしてきた原因の一つにもなっている。

     しかし、本連載の2回目で指摘した人口の量と質の変化は、そんな簡単な変化対応やリニューアルでは到底耐えられないものになってきている。

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