時短営業、フロアシート、アクリル板設置…アメリカとイギリスの小売業の新型コロナウイルス対策

松岡 由希子 (フリーランスライター)
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ウォルマートは特別休暇制度を新設

マスクと手袋を着用してレジで作業するウォルマートの従業員
マスクと手袋を着用してレジで作業するウォルマートの従業員

 ウォルマート(Walmart)でも、ウォルグリーンと同様、来店客と従業員とのソーシャルディスタンスを確保するための対策を講じている。店舗の入口やレジで6フィートの距離を明示するフロアシールを貼り、ソーシャルディスタンスを確保するよう、来店客に促すとともに、飛沫感染予防のためのアクリル板を薬局カウンターやレジに設置。4月以降は、入店者数を売場面積1000平方フィート(約92.9㎡)当たり5人未満に制限したのに加え、来店客同士の接触機会を低減させるべく、入口を1カ所に制限して店内を一方通行とした。また、420日から、店舗や物流センター、本社オフィスで勤務する従業員にマスクの着用を義務づけ、来店客にもマスクの着用を推奨している。

 ウォルマートは、従業員の新型コロナウイルス感染症への感染予防の指針として「6-20-100ガイダンス」を定めている。

 他者と6フィートの距離を保つこと、20秒かけて手洗いすること、体温が華氏100度(摂氏約37.8度)であれば出勤しないことを指示するものだ。店舗や物流センターに赤外線体温計を配布し、従業員の体温測定と基本的な健康チェックを義務づけている。体温が華氏100度の従業員には有給で静養するよう命じており、熱が下がってから3日以上経過するまで職場復帰できない。

 ウォルマートは、新型コロナウイルス感染症に関する特別休暇制度も新設している。新型コロナウイルス感染症への感染が確認された従業員は最長2週間、賃金10割が支払われ、診断書があれば最長26週間、その一部が手当として引き続き支給される。医療機関や行政機関から強制隔離を命じられた従業員にも最長2週間、賃金10割を支払う。また、新型コロナウイルス感染症への不安から休暇を希望する従業員に対しては、最大2週間の無給休暇を認め、通常の有給休暇をこれに充てることも可能だ。

 また、通常2週間ごとに支給されている賃金の一部を毎週受け取ることができる新制度を設けた。希望する従業員には週給の5割が週次で支給される。また、31日時点で在籍するすべての時間給従業員を対象に、特別一時金を支給。フルタイムの従業員には300ドル、パートタイムの従業員150ドルを支払う。四半期ごとの一時金の支給も1カ月前倒しで実施する計画だ。

 ウォルマートは、大規模な新規採用により、店舗や物流センターでの人手不足を解消するとともに、従業員それぞれの事情や都合に合わせた柔軟な勤務にも対応できる体制を整えようとしている。3月以降、15万人を採用し、417日には、さらに5万人を追加採用すると発表した。

 

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記事執筆者

松岡 由希子 / フリーランスライター

米国MBA 取得後、スタートアップの支援や経営戦略の立案などの実務経験を経て、2008年、ジャーナリストに転身。食を取り巻く技術革新や次世代ビジネスの動向をグローバルな視点で追う。

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