「モノを売らない店」丸井が囲い込むD2Cブランド「FABRIC TOKYO」の潜在力

2020/05/11 05:55
梅咲恵司 「週刊東洋経済」副編集長
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顧客の身体サイズだけでなく趣味嗜好もデータ化

 丸井がここ数年、誘致に力を入れているのが、「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシュー マー)」ブランドだ。D2Cとは、定義はまだ明確ではないが、消費者に直接商品を販売 する形態という見方が主流だ。

 ECを活用するケースが多いため、リアル店舗の必要がないようにも見えるが、消費者との接点をつくる目的でリアル店舗を出す企業が、ここにきて増えている。 日本の代表的なD2Cブランドの一つである「FABRIC TOKYO」は、2019年11月時点で全国に16店舗を構え、そのうち丸井には6店舗を出店している。

 同社は、ネット上でスーツやシャツをカスタムオーダーできるサービスを打ち出す。紳士服チェーンなどの、量産型のいわゆる「吊り下げ」スーツではなく、「個々の体型に合ったぴったりとしたスーツを着たい」とのニーズがある20 〜30 代のビジネスパーソンを中心に支持を得ている。

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リアル店舗では、顧客に採寸してもらい、そのデータを保存。身体のサイズだけでなく、 「サッカーが好き」といった趣味や、「スリムなパンツが好き」などの嗜好をデータ化している。

 FABRIC TOKYOの森雄一郎社長は、2019年10月に行った東洋経済のインタビューに際し、「われわれが手掛けるサービスは、カスタマーエクスペリエンス (顧客が感じる心理的価値)向上につながる。顧客との距離が近いので、ダイレクトな訴求・ 情報交換ができる」と強調した。

 D2Cブランドはメガネや靴、スーツケースなど、特定の部分に特化したニッチな商品を展開するケースが多い。丸井は、こういったニッチなニーズを捉えたD2Cブランドを囲い込むことで、商業施設をバラエティ豊かなものにし、活性化することをもくろむ。

 「ECは今後、大手一極に集中していく可能性がある。それではおもしろくない。多種多様なものがある豊かな世界をつくっていかなければならない」。青井社長は、そのように言葉に力を込める。

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