小売・流通業界のコンサル事情と失敗しないためのコンサルの選び方

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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日本のコンサルティングファームに小売の専門家がいない事情

 話を小売・流通に戻すと、外資系コンサルティングファームは伝統的に日本の小売・流通のエキスパートはいない。これには理由があって、例えばアメリカなどの小売業は、チェーンストアという、業務が標準化された巨大企業が多く、報酬が高額なコンサルタントを雇う金があるのに対して、日本の小売業は一部の例外を除き、中小零細企業が圧倒的に多く、コンサルタントを雇うのは一大事だからである。だから、日本や韓国(韓国の小売も中小零細が多い)のような国では、コンサルタントは、昔、有名企業にいた人が、個人で「昔の経験」を語るタイプの人が多い。

 業界では、この手のコンサルタントを「グレイヘア」と呼ぶのだが、私は、グレイヘア型コンサルタントも、色々な条件が揃えば、少なくとも全くの素人で行動管理しかできない外資コンサルタントよりは有益だと思う。

 とはいえ、外部から見れば同じように見える小売・流通業界の世界であっても、企業によってビジネスモデルは全く異なるのだ。例えば、ユニクロとZARAを比較するアナリストなどが多いが、私からいわせれば両社のビジネスモデルは全然違う。同様に、世界企業と日本のアパレル企業でも事業の組み立て方は違うし、SPA(製造小売)型の企業とセレクトショップでは、モノとカネの流れ、在庫の持ち方などは全く違う。各論といえば各論だが、「Retail is detail」といわれるように、このDetailの違いによって、昔のやり方を押しつけられ、その会社の良いところや強みを破壊された企業をたくさんみてきた。グレイヘア型のコンサルタントを使う場合は、その人のキャリアトラックと、自社のビジネスモデルの親和性をしっかり分析する必要がある。

 

プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

河合拓氏_プロフィールブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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