実録!働かせ方改革(9) 残業時間削減で管理職育成をした小売店のここがスゴい!
新卒採用者の定着を図り、社内組織の協力体制を構築
今回は、人事・労務の分野で流行しているマネジメントの手法「1 on 1 ミーティング」についてだ。このミーティングは、各企業で意見や捉え方が異なり、上手くいっているケースとそうでない場合の差が大きい。今回の事例は、私には成功しつつあると思えた。私が導いた教訓を述べたい。
ここがよかった ①
上司と部下が話し合う場を設けた
週1回のペースで上司と部下が直に向き合い、話し合う機会を全社でつくったことは評価されるべきと思う。多くの会社では、このような場すらないのが実態。そもそも、上司と部下が意識や目標を共有することなく、残業時間削減を試みても、どこかでひずみが生じるものだ。
1 on 1 ミーティングの問題点をアンケ―トを通じてあぶりだしたことも、正しいアプローチと言えるだろう。業界や規模を問わず、日本の会社は外資系に比べて、社員の声を聞く姿勢に乏しいように私には見える。労働生産性が欧米企業よりも低い理由の1つは、ここにあると思う。問題点を聞き、それをもとに管理職研修を実施し、改善しようとしたのだから、人事部の判断は素晴らしいのでないだろうか。
ここがよかった②
3つのスキルを習得させた
1 on 1 ミーティングを実施する際、そもそも上司の側に「傾聴」「承認」「質問」のスキルが欠けている、と指摘する声は人事・労務の専門家の間では多い。しかし、これらのスキルをマスターする機会が社内にあまりないのも、また現実だ。私の知人のように、それに関する書籍を読んで独学で習得しようとするケースもあるが、本来は会社としてせめて3つのスキルを学ぶ場を提供するべきだろう。今回の事例はそのような研修をして、さらにアンケート調査をして、よりよい姿を模索している。これも、好ましい。
3つのスキルは、通常の仕事の場でももっと重視されていいものだ。なお、1 on 1 ミーティングの実施そのものについてはさまざまな意見があるので、今回は1つの参考として受け止めていただきたい。
神南文弥 (じんなん ぶんや)
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。
連載「私は見た…気がつかないうちに部下を潰した上司たち」はこちら