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トライアル、西友買収の衝撃! 会見で示された「6つの目的」とは

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集長)
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国内小売市場を揺るがすニュースが飛び込んできた。全国で大型のスーパーセンター(SuC)を主力フォーマットに店舗を展開するトライアルホールディングス(福岡県:以下トライアル)が3月5日、西友(東京都)の買収を発表した。西友をめぐってはイオン(千葉県)やパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(東京都:以下PPIH)も売却先候補と目されていたが、これら巨大チェーンを差し置いて、トライアルが西友を手中に収めた。2社の売上高は単純合算で1兆2000億円超。どのようなシナジーと成長図を描いているのか。同日開催された記者会見の模様を速報する。

売上高1兆2000億円の巨大小売グループが誕生へ

トライアルは西友の完全子会社化を発表した
トライアルが西友の完全子会社化を発表した

 「西友が持つ優秀な人材と企業文化を融合させることで、持続的な成長をめざしていく」。3月5日午後開かれた記者会見で、トライアルの経営陣はこう繰り返した。

 トライアルは同日の取締役会で、西友の株式を取得し完全子会社化することを決議したと発表した。株式取得にあたっては手元資金に加え取引銀行から概算で3700億円の借入金を調達するとしており、およそ3800億円で西友株を取得する。株式譲渡実行日は2025年7月1日を予定する。

 トライアルの24年6月期の売上高は7179億円、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は318億円。西友の24年12月期の売上高(本州事業の速報値)4835億円、EBITDA(同)は340億円。これらを単純合算すると、売上高は1兆2014億円、EBITDAは658億円、売上高EBITDA比率は5.5%の巨大企業が誕生することになる。

首都圏でのトライアルの存在感が一挙に拡大 西友の屋号・PBは継続の見通し

スーパーセンタートライアル利府店外観
トライアルが主力とするSuCの店舗

 トライアルはSuCを主力フォーマットに、本拠を置く九州から近年は全国で積極的な出店を重ねている。24年には四国、北陸など未出店地への進出も果たしており、北海道から鹿児島県まで計343店舗(25年2月末時点)を展開する。

 対する西友の店舗数は、首都圏のほか中部、関西、東北の計242店舗(同)。西友は21年に筆頭株主が米ウォルマートから米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に移って以降、同年3月に社長に就任した大久保恒夫氏のもと、再成長戦略を推進してきた。

 24年には北海道の店舗をイオン北海道(北海道)に、九州の店舗をイズミ(広島県)にそれぞれ譲渡し、本州事業に集中する姿勢を示していた。その後25年に入って早々、一部メディアでKKRが西友株の売却を検討していると報じられ、応札した企業としてイオン、PPIH、そしてトライアルの名が挙がっていた。

 トライアルにとって、西友が持つ人的・物的資産は魅力的だ。もともと出店エリアや立地がそれほど重複しないため、店舗間のカニバリが少ない。そのうえで、これまで手薄だった関東エリア、とくに都市部の駅前立地の店舗を手にできることは、成長戦略上大きな意義を持つ。

 なお、西友の屋号および同社プライベートブランド(PB)「 みなさまのお墨付き」「きほんのき」「食の幸」については、現時点ではそのまま継続する見通しである。

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集長

1987年石川県生まれ・東京都育ち。上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2015年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。編集記者、副編集長を経て25年4月より雑誌ダイヤモンド・チェーンストアおよびダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長。

これまで、企業特集(トライアルカンパニー、大創産業、クスリのアオキ、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。趣味は無計画な旅行とサウナ。最近は年齢相応(?)にランニングにハマり、フルマラソンも完走。

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