ユニクロと競争せず“正しい”戦略ポジションを取っているアパレルとは
ユニクロと戦略的に競争しないアパレル企業は?

次に「差別化」だが、日本のアパレルはユニクロのベーシック衣料に対して「ファッション衣料」を投入して差別化をしようとしている。しかし、ファッション品はZARAに価格で負け、実際に売れているのはファッション品の中にうもれたベーシック衣料品だから、ユニクロと“ガチ勝負”になってしまう。
そう考えると、本来的に差別化ができているのは、セレクトショップぐらいだろうということになる。セレクトショップは世界から売れ筋の商品を集め、日本では企画できないような面白い商品を店頭に出している。だから、ユニクロとは“戦略的に競争していない”(うまく競争戦略ができている)のは、セレクトショップなのだが、このセレクトショップには規模を追求できない事情がある。
というのも、セレクトショップは店頭に商品が並ぶ半年前に欧州に商品を買い付けに行く。半年先の売れ行きのことなど誰もわからない。わからないから、根拠もなく売れると思って大量に買い付けを行うのはリスクがある。だから思い切って販売できない。この長い納期がセレクトショップを小規模アパレルにしているわけだ。したがって、セレクトショップは売上勝負には負けているが、戦略的ポジションでは勝っているともいえる。
最後に「集中化」であるが、帽子、下着、靴、靴下、肌着などはみな専門店でそれらのアイテムに集中している。これらは、帽子、下着、靴、靴下、肌着以外の商品はつくらず、日本のシェアを、いや、世界のシェアを奪っている。例えば、女性下着のワコールなどは世界一といってよい戦い方をしているが、女性のアンダーウエアのニーズが単純計算で人口の半分しかなく、日本では頭角を現しにくいが、世界でもトップクラスの売上を誇っている。ユニクロとワコールを比べるのはりんごとオレンジを比較するようなもので、正しい比較とはいえない。
このように、ひとたび「売上」という言葉を外せばユニクロと戦略的競争をしている会社は山のようにある。ユニクロが注目されたのは、アパレルでコストリーダーシップポジションをしっかり握ったからである。
最後に、コストリーダーシップをとるには、世界をマーケットにしなければならない。日本だけで販売してコストリーダーシップをポジショニングするのは極めて難しいだろう。その意味でも、この10年でユニクロを(売上で)抜くアパレルはいないだろう。
河合拓氏の新刊、大好評発売中!
「知らなきゃいけないアパレルの話 ユニクロ、ZARA、シーイン新3極時代がくる!」
話題騒然のシーインの強さの秘密を解き明かす!!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!
プロフィール
株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
河合拓のアパレル改造論2025 の新着記事
-
2025/03/11
アパレルの離職率低下を防ぐためにやるべきこと、やってはいけないこととは -
2025/03/04
GUがアンダーカバーとの新ライン「UG」を始めるスゴいねらいと効果 -
2025/02/25
3coinsのパルが初任給30万円に!アパレルが改善したいもう1つの給与制度とは -
2025/02/18
ユニクロと競争せず“正しい”戦略ポジションを取っているアパレルとは -
2025/02/11
「あえて着ない」人が増加中 スーツ業界の復活はあるのか?
この連載の一覧はこちら [5記事]
