「あえて着ない」人が増加中 スーツ業界の復活はあるのか?
パジャマ感覚で着られる
ニット製スーツが主流に

そして、スーツだ。
スーツもこの10年で大きく変わった。今主流なのは「ニットでつくったスーツ」だ。
ニットで編んでいる生地だから、しわは付かないし着ていて楽だ。昔のスーツは布帛という生地をパーツにしてつくっていたのだが、今は、ニットの技術が進化してスーツをニットでつくれてしまう。パンツはベルトをしない、紐が腰についたズボンが主流で、これもジャージのようにビヨンビヨンと伸びており、パジャマの代わりにして寝られるほど楽だ。昔のパンツはセンタークリースといって、パンツの両足に折り目をアイロンでつけるか、ホテルにいけば、ズボンプレッサーを借りてセンタークリースをつけていた。私も、職業柄、スーツは自分の体型にあったものを作っていたが、一度ニットのスーツを着てしまうと、布帛の伝統的なスーツは着れないほどらくちんだ。
今もっとも厳しいのはネクタイ業界ではないだろうか。カジュアル化はノーネクタイから始まったからだ。こうしたトレンドをしらないオジサンでも、普段のスーツスタイル、あるいはジャケパンスタイルから「ネクタイさえ外せば普段着」だと思っている。休日用の服はゴルフウエアぐらいしかもっていないので、休日は当然ネクタイを外しているし、最近は猛暑で、会社もノーネクタイを解禁しはじめ、お堅い金融業界でさえネクタイを外すようになってきた。今、朝の新橋でネクタイをしている人は圧倒的に少数派で、通勤電車を見てもむしろ制服の高校生か新入社員の入社時期ぐらいしかネクタイの集団を見かけることは減ってしまった。
このように、スーツや革靴、機械式時計、などはどんどん時代とともに変わっている。そんななかでもオンワード樫山の「スマートテーラー」は売上が伸びているようだし、AOKIは“寝起き”でテレワークできる「パジャマスーツ」などをヒットさせた。スーツ専門店はこれから、こうしたスーツの変遷を研究し、すべてポリエステルでできているスーツや、芯地がはいっていないニットスーツなど、新しいスーツとクラシカルなスーツをわけて販売してみてはいかがだろうか。月曜日から金曜日までは人は働いているわけだから、スーツやスーツ風の服を着ている人はそれなりにいるはずだ。スーツにスニーカーなど、セレクトショップがやっているような新しい着方を提案してみてはいかがだろうか。
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プロフィール

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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