ユニクロがZOZOに出店しない当然の理由と今後のECモールとの付き合い方

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
Pocket

私は前回、日本企業の夢展望が巨大ECモールを世界中で展開する「Temu」に出店する疑問と懸念点を指摘した。今日は、こうしたECモールに対してアパレルはどう対応すべきか、今後のECモールとの付き合い方について持論を展開したいと思う。

ECモールは「顧客のバケツ」を保有するプラットフォーマー

 まずはオンラインモールのビジネスモデルについて考える。モールとは、いわば、「顧客のバケツ」のようなものだ。そのバケツには服を買ってくれる顧客が山のようにいて、そのバケツの中で「顧客の奪い合い」を同じモールに出店している競合アパレルと行うのである。

 モールにしてみれば、誰が勝とうが関係がない。結果的に、例えば1億円の売買がそのモールを通じてあがれば、それに応じた「通行料金」を頂けるからだ。つまり、モールというのは、テナントであるアパレル企業から見れば、高度にルール化された「プレイグランド」であるということである。そして、誰かが勝とうが、負けようが関係ない。取引高が大きければ、通行料金を沢山もらえるし、小さければもらえない。それだけである。

 集客力の高いオンラインモールは、きわめて強い存在だ。例えば、○○セール!などといって、クーポンや期間限定セールを頻繁に行っているわけだが、そのセールのディスカウント料金をテナントに負担してもらう(テナントがモールのセールを手伝って、値引きをする)ことで、モールの自社リスクを極力減らしている。

 くどいようだが、モールの収益源は「通行量の総和(から発生する手数料と広告料)」だから、それがセールから来ようが、プロパーから来ようが関係ない。

 極端な例として、「オール70%ディスカウントセール!」というキャンペーンを行ったときのことを考えてみよう。

 アパレルテナントは大赤字になるが、モールは「ディスカウントなりの通行量に応じた手数料」を頂くことができ、施策によって売上が最大化されるので、むしろディスカウントは歓迎すべき打ち手なのだ(実際は、アパレルテナントの通行量に応じた手数料には細かな計算式があって、それほど簡単ではないのだが、ここはあえて分かりやすく書いておく)。

 

河合拓氏の新刊、大好評発売中!
知らなきゃいけないアパレルの話 ユニクロ、ZARA、シーイン新3極時代がくる!

話題騒然のシーインの強さの秘密を解き明かす!!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!

1 2 3

記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態