ユニクロがZOZOに出店しない当然の理由と今後のECモールとの付き合い方
もしユニクロがZOZOTOWNに出店したらどうなるか?
どんなデメリットがユニクロに起こるのかをわかりやすいように説明すると、もしユニクロがZOZOTOWNにユニクロが出品していたとすると、ユニクロを買う場合、ポイントのないユニクロではなく、ポイントやディスカウントだらけのZOZOTOWNで買おうという選択をするお客が一定程度出てくる。そうした客はそれ以降すべてZOZO経由でユニクロを買うようになるだろうし、ユニクロとしては売上総額は一緒でも、優良顧客のデータをZOZOに渡し、ZOZOはその優良顧客を囲い込むために、ユニクロの類似品をレコメンドしたり新たなブランドを提案をしたりすることになるだろう。そうするとユニクロから顧客が離脱することになる。
もちろんユニクロの顧客ロイヤルティが絶大で、どんな提案をしてもZOZOTOWN内でその顧客がユニクロだけを買い続けたとしてもZOZOTOWNとしてはそれはそれでよい。「経由」=「通行量」なので、何もせずに売上・利益を上げられるからである。
これでユニクロがZOZOTOWNなどオンラインモールに原則出店しない理由がわかっただろう。三井不動産のオンラインモール「&mall」に出店しているのは、商業施設「ららぽーと」との強い関係性があるからだ。
これからのモール戦争の焦点は「誰がネクストの地位に就くか?」
このように、モールというのは「プラットフォーマー」のことで、その上で汗を流して上納金を稼いでいるのがアパレルテナントということになるのだ。
したがって、Temuだけでなく、シーインも自らをプラットフォーマーにしようとしているし、日本でもオンワードが自社ブランドにこだわらないモールをつくろうとしている。つまり、これから10年の戦いは、だれがAmazonにつぐ「セカンドECモール」となり、世界のアパレル市場を制覇するかという点だ。モールへの出店というのは、単に「売上が欲しいからやります」ではなく、極めて戦略的な洞察と将来への予想が必要となるのである。
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プロフィール
株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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