A.T.カーニー福田稔氏が見通す、GMS改革、セレクトショップ、ECの未来
古着市場はさらに拡大する
──素材開発の方向性も変わっていくのでしょうか。
福田 経産省の産業構造審議会内の繊維産業小委員会ではサステナブル素材や環境配慮素材の定義を作成し、国際規格(ISO規格)にも対応させようとしています。
大きなトレンドとしては、長持ちする、何度も着られる、リサイクルもしやすいことが一番サステナブル(持続可能)な消費行動であるので、欧州では耐久性の低い素材は排除していくという方向です。
もう一つが生分解性。要は土に返るということです。新しい素材としては耐久性があって生分解性があり、生産時に環境負荷が低いことが求められています。それに最も近いのがSpiber(スパイバー:山形県/関山和秀社長)のタンパク質素材「ブリュード・プロテイン」です。コストをどこまで下げられるかが課題ですが、スパイバーはユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)であり、繊維の分野でもう一度産業全体を盛り上げていこうという動きがあります。
──古着ビジネスはどうみていますか。
福田 古着はグローバルですごく伸びています。グローバルのアパレル市場は約200兆円ですが、その中で古着が約30兆円になってきていて、年率約17%で伸びています。
理由は大きく3つあります。
1つ目は消費者にC2C(消費者間取引)アプリが浸透し、不要な衣料品を売るという行為が根付いたからです。日本では「メルカリ」、アメリカでは「スレッドアップ」などです。
2つ目は新しくモノを作らず、循環させたほうがサステナブルな消費行動であるということが世界的に広まっているからです。欧州では原材料の調達、生産から廃棄までに排出されるCO2を示す「カーボンフットプリント」が低いということを消費者が認知しているので、古着を買います。
3つ目はリセール(再販売)、リユース(再利用)、リペア(再生)までメーカーブランドが責任を持つようになったからです。先進国には拡大生産者責任(EPR)法があり、売った後の廃棄やリサイクルまで生産者が責任を持ちなさいと当局が促しています。
たとえばZARAも「プレオウンド」(中古品)と呼ぶ2次リリースサービスをイギリスやフランスなどで始めています。お直しサービス、顧客間販売、古着の寄付ができる仕組みを提供します。ユニクロも国内外でリペアサービスの併設店を増やしています。流れとして、ブランドが自分たちの2次リリースを見ることが、これからのトレンドで間違いなく伸びますし、成長の大きなポイントになると思います。